すると被験者は、自分についてポジティブな感想を言ってもらえた場合のほうが、相手のことを信用し、手助けをする確率が高かった。この結果は、お世辞を言うことで相手が得をしていると被験者が認識したあとも変わらなかった。
そのお世辞がどのくらい的(まと)を射(い)ているかも、関係なかった。だいぶ大げさなことや、あきらかにウソとわかるようなお世辞を言われた場合でさえ、やはり相手にいっそう好感をもち、協力する確率が高くなったのだ。
だがサイコパスにとっては、世界は絶対に信用できない人間であふれかえっている。
スーパーマーケットのレジでは釣銭をきちんと数えなければならないし、自動車整備士がやると言ったことを本当にやったのかどうか確認しなければならない。
誰もが自分と同じように考えていると思い込んでいるので、被害妄想が極端に強いのだ。他人が自分のことを信用しているとは思えないので、少しでも隙を見せれば裏切られると思っている。
それでも自分の魅力を駆使すれば、信用されやすくなることはわかっている。だからこそサイコパスに騙された人たちはよく、初めて会ったときにすっかり魅了されたと報告しているのだ。
サイコパスがあなたを褒めるのは、あなたに信用されたいからだ。サイコパスは聞き上手でもあり、自分にとってはこれが重要なのですというあなたの話に耳を傾け、そのことをあなたに行動で示す。
アメとムチを使い分けて忠誠を強要する
たとえばチェンバレンは「戦争は起こさない」とヒトラーに言ってほしいと思っていた。だからヒトラーは、チェンバレンにそう言った。さらにケーキに粉砂糖をまぶすかのように、少しばかりお世辞を振りかける。
大半の人は、これでもうサイコパスを信用してしまう――それまでの相手の行動がどれほどひどいものであろうとも。
サイコパスは他人を信用していないのに、どうして人間関係を築けるのだろう? たしかに築けるが、それはあなたが望んでいるような人間関係ではない。
サイコパスはあなたを信用できないので、あなたをコントロールする必要がある。つまり、あなたとの関係を維持する必要があるかぎり、彼らはあなたにアメとムチを使いわけて忠誠を強要しようとするのだ。
(翻訳:栗木さつき)
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