フジテレビが《最もクリーンなメディア》になる? 「楽しくなければテレビじゃない」脱却宣言と「アナウンス室の独立」が示す“苦しすぎる事情”
これらを前面に押し出すことで、フジテレビに限らずエンタメに重要な「楽しい」や「笑い」が後回しになったり、ブレーキをかけたりという可能性はあり得るでしょう。
その点について清水社長は、「フジテレビのよいところがたくさん詰まったスローガンだと思う」「『脱却』と言うと『全部捨てるのか』と思われるかもしれませんが、そういうわけではありません」「『誰かが犠牲になることは許されない』ということを厳しく戒めるために、あえてそういう言い方をしています」などとも語っていました。
ただ、少なくともしばらくの間は「絶対に失敗できない」という状況が続くだけに、この点が“厳重警戒”というニュアンスで実践されていくのでしょう。
“脱却”とまで言い切った以上、「公共性をもって社会に貢献」「社会の公器としての役割」を逸脱しない楽しさや笑いとは何なのか。どこまでの企画や表現なら大丈夫なのか。
スポンサー企業がCMを引きあげるという事態が二度とあってはならないため、「制作現場も上層部も慎重にならざるを得ない」という心理状態が推察されます。
「脱却」と言い切った意図
あえて“脱却”というフレーズを使ったのは、「そこまで言い切って変わる意思を示さなければスポンサー企業は戻ってこない」という現状の厳しさからであり、とにかく今はなりふり構わずすべてを変える姿勢を見せることの優先順位が高いのでしょう。
実際、CMスポンサー企業は、400社以上だった昨年4月から1年で約90社にまで減ったことが明かされています。フジテレビを見ていると同じ番組・映画・舞台のCMが朝から夜まで繰り返され、中には10月31日公開の映画『爆弾』も含まれていました。
「こんなに早い宣伝に意味はあるのか」「むしろ逆効果ではないか」という声もあがる異常事態であり、この“脱却”宣言は仕方がないのかもしれません。
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