「食事時間以外は、ずっと下を向いていました。同じ姿勢でいることもですが、スマホもダメ、読書もダメ。何もできなくて暇なのもつらかった。夜は、ドーナツ状の枕に顔を埋めて寝ました」(鈴木さん)
「悪いお知らせがあります」
鈴木さんの受難は退院後も続いた。
ガスが抜け切るまでは、週1回程度の通院が必要になる。手術後は眼帯をしていたが、2週間くらいでガスが90%ほど抜け、医師から眼帯を外してもいいと許可が下りた。視界は良好だった。
しかし、このときに受けた検査で、反対側の右目にも軽い網膜剥離が見つかってしまう。軽度だったことから、レーザーで網膜を凝固させる「網膜光凝固術」の日帰り手術を受けた。
「焼けるような匂いがして少し気になりましたが、こちらも特に痛みもなく、1時間程度で終わりました。今度は右目を下にして過ごしていました」(鈴木さん)
右目のレーザー手術から20日後。さらなる試練が待ち構えていた。担当医が「悪いお知らせがあります」と言ってきたのだ。それは衝撃すぎる内容――左目の網膜剥離の再発だった。「もう仕方がないという感じ。覚悟を決めて同じ手術を受けました」と鈴木さん。
両目の網膜剥離。そして再発。医師から「こういうケースはめずらしい」と言われたそうだ。
手術から2年が経過した今、特に気をつけていることはないという。
ただ、目を強くこするのは網膜剥離のリスク。花粉症でも特に目に症状が出やすいという鈴木さんは、「抗アレルギー薬や点眼薬は欠かせません。目がどうしてもかゆいときは、周辺を手で押さえることでなんとか耐えています」と話す。
改めて、「こうすればよかった」ということはないかと聞いてみると、「目に異常があると感じたら、早めに眼科を受診したほうがいいと思います」と答えた。
余談になるが、最初に受診したクリニックで鈴木さんは眼科医から、「すぐに連絡が取れるのはA(総合病院)かB(眼科専門病院)だが、どちらにするか」聞かれた。結局、Aの総合病院を選んだが、「冷静に考えるべきだった」と後悔しているそうだ。
というのも、網膜剥離の治療は保険診療なので、かかる費用は同じだが、Aは差額ベッド代がべらぼうに高かったのだ。