
鈴木さんは紹介状を持って総合病院で精密検査を受けると、やはり網膜剥離との診断だった。すぐに入院・手術の日程が決まった。
「モノが見えづらいけれど、特に痛みがあるわけでもない。だから最初はまったくピンとこず、実感がわきませんでした。でも、“失明の危険性がある”と言われたとき、初めて恐怖を感じました」と、鈴木さんは振り返る。
網膜剥離の原因はよくわかっていないが、加齢やストレス、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー、遺伝などが関係するとされている。鈴木さんの場合は、加齢、ストレス、花粉症が当てはまるものの、家族で網膜剥離になった人はいない。
「かなり前にレーシックの手術をしていたので、気になって聞いたんですが、それが原因ではないと言われました」(鈴木さん)
1日中「うつ伏せ」の苦痛
最初の受診から2日後。鈴木さんは総合病院に入院し、翌日には手術を受けた。「硝子体顕微鏡下離断術(しょうしたいけんびきょうかりだんじゅつ)」というなんとも難しい名前の手術と、「水晶体再建術」を組み合わせたものだった。
どんな手術なのかは後述する医師の解説に委ねるが、手術は約1時間で終了。失明の恐怖からは逃れることができた。麻酔の影響もあって特に痛みがなかったので、「ホッとした」という鈴木さん。
だが、大変だったのはここからだった。
網膜剥離の手術では、剥離した網膜を眼底に定着させるため、眼内にガスを入れる。体に害はないが、退院までの3日間はガスで網膜を押し続けるため、常にうつ伏せで過ごさなくてはならなかった。