アジャイルは朝令暮改?MECEの罠とは?今さら聞けないビジネス用語の本当の意味を『ビジネス版 悪魔の辞典』が暴く

『ビジネス版 悪魔の辞典』というタイトルがついた赤い本が書店に並んだのは、1998年のことだった。タイトルこそ恐ろしいが、じつはこれ、アンブローズ・ビアスというアメリカの作家が1911年に上梓した『悪魔の辞典』のオマージュだったのである。
大衆(public n.) 法律制定の諸問題で無視して差し支えない要素。
(どちらも岩波文庫『新編 悪魔の辞典』より)
たとえばこのように、もとの『悪魔の辞典』は、辞典の体裁を保ちながらも社会を痛快かつアイロニックに評したものであった。
その大胆さが決め手だったわけだが、『図解 ビジネス版 悪魔の辞典: ビジネス用語の黒い真実』(山田英夫 著、東洋経済新報社)は、その精神を継承したといっていい現代日本版。しかもビジネスパーソンをターゲットとし、「よく聞くけれど意味がよくわからない」ビジネスワードの“本当の意味”を明らかにしているのである。
特筆すべきは、そんな「ビジネス版」が何度も重版され、以後のリニューアル版や文庫、新書へと改訂されていった点である。ビジネスシーンに蔓延する“よくわからないことば”の意味を(できれば人に知られずコッソリと)知りたいという方からのニーズが大きかったということだ。
最新版である本書は、そうしたプロセスを経て誕生することになったわけである。
「ビジネス版悪魔の辞典」転生の裏側
お互いブレスト(本書77頁・類義語)も交えながら、本書の制作がスタートしました。キックオフ(本書154頁)してみると、若いビジネスパーソンが理解できない言葉は、私が面白いと思っても、担当編集者Sさんに総合的に判断(本書129頁・類義語)され、次々とボツにされました。“やさしい悪魔”の希望を叶えようと、何度も推敲を続けていく中、つい熱が入りすぎ、何度も体温計で熱を測った記憶があります。(「はじめに」より)
この文章がそうであるように、肩の力が抜け切ったアプローチがいかにも魅力的。「たしかに聞いたことはあるけれど、たしかに意味がよくわからないことば」と真正面から向き合っているのだから、おもしろくないわけがない。
では、はたしてどのような解説がなされているのか、「ビジネスフレームワーク」と名づけられた章のなかからいくつかを拾ってみよう。
【アジャイル】朝令暮改。
「この案件は重要なので、なるべくアジャイルで進めよう」
外資系コンサルが「迅速に」という意味で使っているので、気取って言っているなら、心の中でクスクス笑っていればいいですが、本当の意味を知ると、とっても怖い言葉なんです。(11ページより)
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