人類がギャンブルや酒に依存してしまう理由は、人類の祖先の「食べ物探し」という行動にたどることができる

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そこにあるのはたった一本の、実のついていない灌木(=ニアミス)かもしれない。そこまで歩いてくるのに消費したエネルギーを補うにも足らない、わずかな果実をつけた木(=勝ちを装った負け)かもしれない。

あるいは本物の勝利。灌木には果実がいっぱいになり、しかもそうした果実を鈴なりにつけた木があたり一帯に生えているかもしれない。

もし狩りをしていたのだとしたら、遠くに見えたその動物は痩せていて小さいかもしれない。大きくて太っているかもしれない。1匹だけかもしれないし、群れ全体と一緒かもしれない(スロットマシンのリールが勝利を示唆し、私たちは胸を高鳴らせながら、獲物がどれだけ大きいかわかるのを待つ)。

もし動物が逃げてしまったら、私たちはニアミスを経験する。

そしてもちろんこの行動は毎日、1日の大半の時間、繰り返される。進化は欠乏ループの魅惑を私たちの頭に叩き込んだ。だからこそ、脳はこのループに陥るよう反応を強める。生き残る機会や生活を向上させる機会がもたらされ、それには予測不可能な報酬がともない、人々はすみやかにその行為を繰り返してきた。

ゼントールいわく、この古代のゲームは食べ物だけではなく、生活を向上させる機会をもたらす万事の獲得に当てはまる。たとえば、所有物や他の資源や情報や社会的地位の獲得や、私たちを気持ちよくしたり、次の1日を生き延びられるようにしたりする何かの獲得などだ。

ドーパミンに対する誤解

生き残るために欠乏脳は、人間を欠乏ループへと押しやるシステムを発展させる必要があった。そこで登場してくるのが、あまりに有名なため、誤解されるようにまでなった脳内化学物質のドーパミンだ。

1990年までに科学者らは、人間の行うあらゆる楽しいものごとにドーパミンが関連していることを発見した。それによれば、セックスも薬物もギャンブルもみな、脳からドーパミンを分泌させるのだという。

「このようにドーパミンは、快楽の神経伝達物質だと考えられていました」とミシガン大学の神経科学者、ケント・ベリッジは言った。理論的にはこれらの行為は、ドーパミンの高揚感を追い求めるための単なる手段ということになる。

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