増田さんに浪人して良かったことを聞いたところ、「勉強のほかにたっぷりと読書量を確保できたこと」と答えてくださいました。頑張れた理由をお聞きしたところ、「小学校や中学、高校時代に身につけた教養の肺活量の余裕があったから」とのことでした。
「受験に関係ない読書や映画が勉強体力を作り上げ、浪人してからの肺活量につながったのだと思います。浪人期間にもたくさんの作品に触れたおかげで、自分はまだできる、まだまだ全然余裕があると思えた。関係ないように見える勉強が後々に生きてくるというその経験が今の作家活動にもつながっていると思います」
あのとき逃げなかったことが生きている
そして増田さんは最後に、自身の経験から若者への思いを語ってくださいました。
「僕は高校時代に北大で七帝柔道をやると決めました。もし、面倒になってコツコツやらなければならない受験勉強から逃げ出していたら、一生逃げる人間になったと思う。社会に出てからは理不尽なことがたくさんありますが、自分は『あのとき逃げなかった』と思えるようになったことが、人生に生きていると思います。
みんな誤解してますが、大学受験は義務ではなくて受験生の権利なんです。高校受験と違って内申書が悪くても関係なく、誰でも東大や京大にも挑戦できます。誰にでも平等に与えられた若者の権利です。どんなに小中高で成績が悪かろうと、親が勉強させてくれなかった幼少時代だろうと、スタートが誰よりも遅れていようと、自分がやる気になって『必要な勉強量』を確保すれば、必ず旧帝大でも早稲田でも慶応でも入れる。憧れの大学があったらやり切ってほしいです。
正直言って浪人は陽性の青春ではない、自分しか頼りにならない陰性の日々ですが、受験を頑張ったら、その後の人生で様々な境涯の人——例えば職場の片隅で落ち込んでいる人や病気がちの人とかの気持ちも見えるようになります。他人を思いやるその心こそが受験を経験した者の宝であるし、また人間としての成長なんじゃないかと思います」
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