自動車に代表される製造業の競争戦略はどうあるべきか リアルタイムデータと生成AIで競争優位を確立する方法

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フュージョンストラテジー
既存の取り組みと「フュージョンストラテジー」とは、何が異なるのでしょうか(写真:Supatman/PIXTA)
現在、多くの企業で生成AIのビジネス活用への関心が高まっているが、日本が得意としている製造業は、どのように生成AIをビジネスへ活用し競争力を高めるのか。
近著『フュージョンストラテジー:リアルタイムデータとAIが切り拓く産業の未来』の翻訳に携わった、株式会社クニエの須藤淳一氏が、IoT×AIがつくり出す新たなビジネス戦略について解説する。

製造業の競争力の源泉となるもの

製造業の競争環境は、デジタル技術の進化によって、かつてないスピードで変化しています。

フュージョンストラテジー: リアルタイムデータとAIが切り拓く産業の未来
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従来、企業の競争優位性は、高品質な製品を大量に安定供給できる生産能力や、熟練の技能に支えられたモノづくり技術にありました。しかし、自動車のSDV化に代表されるように、製品がデジタル化する現在においては、製品を通じて収集されるリアルタイムの使用データをいかに活用し、顧客に新たな価値を提供できるかが、企業の成長性を左右するようになっています。

このような時代において、ダートマス大学のビジャイ・ゴビンダラジャン教授と、ボストン大学クエストロム経営大学院のベンカット・べンカトラマン教授が提唱するのが、「フュージョンストラテジー(Fusion Strategy)」です。

これは、物理的な製品とデジタル技術を高度に融合させることで、顧客への提供価値を“製品の所有”から“製品の利用体験”へと進化させる考え方です。製品そのものを競うのではなく、顧客がどのように製品を使い、どのような課題を解決し、どれだけの成果を得たかという視点がより重要になってきているのです。

「製品や機械とデジタル技術を融合させる」という発想自体は10年以上前からあるもので、IoT技術の発展やドイツの掲げたインダストリー4.0など、その形を変えて多くの企業が取り組んできました。私たちがご支援するお客様の中でも、製品をデジタル化して外部接続することで、保守・保全以外のサービス利用料課金による新たな収益化を単独企業で実現するというビジネスも存在します。

それでは、こうした既存の取り組みと「フュージョンストラテジー」とは、何が異なるのでしょうか。

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