自動車に代表される製造業の競争戦略はどうあるべきか リアルタイムデータと生成AIで競争優位を確立する方法
ゴビンダラジャン氏らは、「フュージョンストラテジー」を可能とするデジタル技術として、データグラフとアルゴリズム、そしてそれらの高度化を加速させるAIを挙げています。
データグラフとは、製品、顧客、利用状況などのデータ間のつながりや相互関係を定義し可視化できるようにしたものです。製造業のデータグラフはAIによって強化され、製品/機械を中心に、設計データ、製造データ、使用中データを収集すればするほど、より顧客に合った製品を提供でき、顧客価値を向上させる「データネットワーク効果」を発揮することができます。
そして、このデータグラフを分析し、実行可能かつ個々のケースに最適なアクションを推奨するのがアルゴリズムです。アルゴリズムは、データを活用して事象を可視化する「記述的分析」、因果分析によって事象の原因を説明する「診断的分析」、データを機械学習などで分析し次に起こり得る事象を予測する「予測的分析」、生成AIなどを活用し問題を解決するためのアクションを提示する「処方的分析」の4段階で発展を遂げています。
データグラフと発展したアルゴリズムを用いることで、企業は、設計データ、製造データ、利用データを分析し、個々のユーザーに対してより高いレベルのパーソナライズされたサービスを提供することが可能となるのです。
4つの戦略領域と企業の取り組み状況
さらに「フュージョンストラテジー」には、「フュージョンプロダクト」「フュージョンサービス」「フュージョンシステム」「フュージョンソリューション」の4つの戦略領域があり、企業はいずれかひとつを追求しつつ、段階的にほかの領域へと拡張しながら成長機会を探っていくことが求められると想定されます。
多くの企業が最初に着手するのが「フュージョンプロダクト」でしょう。製品や機械にセンサーを搭載し、リアルタイムのモニタリング、リモート制御、稼働データの分析を通じて、最適な運転や予防保守を実現します。これは製造業におけるデジタル戦略のベースとなる取り組みと言えます。