「価格競争を脱する」マーケティングの2つの戦略 日本の製造業が低利益率から抜け出せない理由

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握手をする男性
企業を成長させるマーケティングとは?(写真:Graphs /PIXTA)
日本企業は、いまだにグローバル市場において、技術力で優位に立つ業界が数多く存在する。その一方、売上高利益率はこの半世紀にわたりほぼ一貫して低下してきた現実がある。
この状況を打破するために、マーケティングに活路があると述べるのが、このたび『新版 BtoBマーケティング DX時代の成長シナリオ』を上梓した慶應ビジネス・スクール教授の余田拓郎氏である。
本記事では、日本企業が利益率を高めるために、マーケティングを行う際の基本的な2つの戦略を解説する。
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今の日本の経営者はリスクをとらなくなったと言われる。令和4年度版の経済白書では、日本における経営が保守化していると指摘されている。経営に対する安定志向は悪いことではない。しかし、それが行き過ぎると経営が保守化し、新たな試みや投資に悪影響を及ぼすことになる。

BtoB領域でマーケティングを企業成長に結びつけようとするとき、経営層のリスクをとるという姿勢がきわめて重要だ。とくに以下の2つのリスク回避行動には十分な配慮が必要である。

性格の異なる2つの「プロモーション」戦略

第1に、売り方、つまりプロモーションの方法である。

日本型のBtoBマーケティングは、ファーストコンタクトから成約まで人的な営業活動、つまりフィールドセールスを中心に展開するプロモーションスタイルをとってきた。こういったプロモーションスタイルは、広告やブランディングを活用したプル型プロモーションとの対比で、プッシュ型プロモーションと呼ばれる。

人的営業に依存した売り方が世界的に見て一般的かといえば、そうとはいえない。欧米では、プル型プロモーションも活発である。日本が欧米に比べて人的営業に依存した市場活動が一般的だった理由は、需要が地理的に集中しているからである。

現在、プッシュ型プロモーションからプル型プロモーションへのシフトは、コミュニケーションコストの低下によって、そのメリットが拡大している。とくに、インターネットを通じた顧客接点強化の費用対効果はきわめて高い。

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