「価格競争を脱する」マーケティングの2つの戦略 日本の製造業が低利益率から抜け出せない理由
一方、フィールドセールスの担い手である営業人材は、どこも引く手あまたで転職市場での価値も上昇傾向が継続している。つまり、フィールドセールスによるプッシュ型プロモーションの費用対効果が相対的に低減傾向にあるということである。
リスクの話に戻そう。プッシュ型とプル型のプロモーションでは、コストの中身に違いがある。フィールドセールスは、セールスパーソンの人数に応じて売り上げが立つので、セールスパーソンを1割増やせば、売り上げも1割増えるといえる。一方、セールスパーソンをどんどん増やしていくと、徐々にエリアの重複や非効率的な顧客への対応が増え、営業効率も低下していく。
それに対し、プル型プロモーションは、固定的な初期費用が相対的に大きく、また投入額が小さい場合には、その効果は限られる。その一方、広告費などの投入の拡大とともに初期の固定費が配賦され、規模の経済によって費用対効果が高まるような性格を有している。
ここでさらに重要な点は、プル型プロモーションは、一般的に人的な営業活動が中心となるプッシュ型より価格競争に巻き込まれにくいことである。プル型では、事前の広告やメルマガ、サイトの情報等を起点として製品の選択や引き合いが生ずる。いわゆる消費財における「指名買い」である。
その結果、(価格ではなく)製品やサービスへの顧客の関心や取得欲求が購買行動の動力源になりやすく、価格競争から距離を置くことができる。
つまり、広告やブランドを中心に置くプロモーションスタイルは、事業や売り上げが大きくなれば規模の経済によってコスト構造が改善されていく。さらに顧客からの「引き」が価格競争の回避に結びつきやすい。けれども、固定的な投資が欠かせないのである。そのため、プル型プロモーションにはリスクを取りつつ、売り上げを拡大し、固定費を配賦していく姿勢が必要になってくる。
利益率に直結する「コンセプトの策定」
第2に、リスク回避行動という点でさらに重要なのが、「コンセプトの策定」である。
コンセプトとは、 提供しようとする価値のことを指す。「高品質の部品」を提供価値、すなわちコンセプトとするならば、少なくともこの軸の上では、競合より高い価値を持たなければ競争には勝てない。競争環境下ではコンセプトの策定はきわめて重要な作業である。
だが、BtoB企業の中には、製品やサービスのコンセプトは、一般消費者向けの消費財だけの話だろう、と考えている製品開発担当者をしばしば見かける。これは間違いである。自社の提供する製品やサービスについて、他社と比べてどのような(相対的に高い)価値を持たせようとしているのかを明確にしなければ、顧客からの支持は得られないし、収益は高まらないだろう。
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