IEEPAと関税の妥当性について、徒然なるままにネット上で検索してみたら、アメリカ議会調査局の資料の中に「IEEPAと関税:歴史的背景と主要課題」(2025年4月7日)という文書を発見した 。
今回の枠組みは「ニクソンショック時」とそっくり
実はこのIEEPAには、前身となるTWEA(Trading With the Enemy Act of 1917=敵国交易法)という法律があり、1971年8月15日にリチャード・ニクソン大統領が「ドル金交換一時停止」、いわゆる「ニクソンショック」を発動した際に使われたことがあるという。
おおおお、そうか、そうだったのか。われ発見せり。今回のトランプ大統領による相互関税は、半世紀前の「ニクソンショック」にそっくりなのだ。
まだ筆者は小学校5年生だったが、日本中が動揺していたことを覚えている。また後年になって、先輩世代の商社マンたちからそのときのショックがいかに深かったかを、何度も聞かされたものである。そうなのだ。アメリカは昔から「外国を驚かす国」であった。サプライズは、何もトランプさんの専売特許ではないのである。
1971年夏、ベトナム戦争に疲れたアメリカでは貿易赤字が拡大し、国内の金保有量が激減しつつあった。そこでニクソン大統領は8月15日、日本の終戦記念日に合わせるかのように、一連の施策を宣言した。①ドルを金本位制から切り離し、②すべての輸入に10%の課徴金を導入し、③価格統制を実施した。それまでは為替レートは1ドル=360円の固定相場制だったが、それが変動相場制に移行することになる。
このときに導入された輸入課徴金(実質的な関税)は、「特定の国を標的とするものではない」と説明された。しかるに当時、破竹の勢いで成長していた日本と西ドイツに、通貨の切り上げを迫る意図があることは誰の目にも明らかだった。そこで使われたのがIEEPAの前身の法律TWEAであり、このときも「関税は交渉のツール」であったのだ。
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