やっぱり歴史は韻を踏むのか?トランプ関税は1971年の「ニクソンショック」の構図にそっくりだ

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「ニクソンショック」と「トランプ相互関税」の歴史的アナロジーが成立するとすれば、相互関税が短命に終わることも十分に考えられよう。また、ニクソンショックが固定相場制にとどめを刺したことを考えれば、歴史の大きな転換点になると捉えることもできそうだ。

また、マーケット的な見地からは、トランプ関税の形骸化は株価を押し上げる好材料ということになる。ただし、1970年代のようなスタグフレーション再来とならないことを祈る必要があるだろう。

トランプとニクソンの共通点は強烈な「エゴイズム」

ところでニクソン大統領と言えば、アメリカ政治研究の偉大な先達、松尾文夫さんについて触れておきたい。松尾さんは共同通信元ワシントン支局長を務めたジャーナリストで、『アメリカと中国』『銃を持つ民主主義』『オバマ大統領がヒロシマに献花する日』などの著作を残している。若くして「もうひとつのニクソンショック」こと、ニクソン訪中の予言を的中させたことでも知られている。2019年2月に出張中のアメリカで逝去されたが、生前よく「トランプとニクソンは重なるんだよ」と語っていたものだ。

ニクソンが訪中計画を公表し、世界を驚かせたのは1971年7月のこと。この年の『中央公論』5月号で、当時まだ37歳だった松尾さんは「ニクソンのアメリカと中国~そのしたたかなアプローチ」という論文を寄稿している。リードには「米中関係は今や動き出した。日本が見落としているこの米国の思惑とその限界を綿密に追う」とある。松尾さんはアメリカの対中「頭越し外交」を正確に見通していたのである。

あらためて松尾論文を読み返してみると、最後の部分にある「『米国の利益第一』のエゴイズムで押し通すニクソン・ドクトリン」という一節が目に留まった。この「ニクソン」を「トランプ」に置き換えれば、そのまま今でも通用するだろう。ニクソンとトランプの共通点は強烈な「エゴイズム」にあり、ということだ。

あらためて思うのだが、アメリカ大統領によるサプライズは今に始まったことではない。驚くのは、こちらの修行が足りないからであろう。ただし人間は忘れる生き物である。だからサプライズは繰り返され、ここでも「歴史は韻を踏む」ということになる(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

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