「稀代のダメ男」キャラから学ぶ “メタ思考”の真髄 読書は「自分を客観視すること」に繋がる

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だから私は、学生たちにいつも、

「本を読んだら、自分の経験に引きつけて考えてみてくださいね」

と言っています。

たとえば先ほどの太宰だったら、『人間失格』を読んでもらい、

「みなさんも道化のようにふるまったことはありますか?」

「うまく道化を演じたつもりだったけれど、ワザとだと周囲にバレたことはありますか? あるいは逆に、誰かの道化を見破ったことはありますか?」

といった問いを立てて、エピソードトークをしてもらう。そんな授業をしています。

私の仕事の大きな支えとなった言葉

私自身も、本を読むときは、必ず自分の経験に引きつけて、行動に生かしています。

たとえば『徒然草』を読んだとき、高校生だった私は、ある言葉に大きな刺激を受けました。それは、

「後(のち)の矢を頼みて、初めの矢になほざりの心あり」

という言葉です。これは、後の矢=2本目の矢を当てにしていると、初めの矢=1本目の矢にいい加減な心が生まれる、という意味です。

すごいメタ思考
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大きな刺激を受けた私は、すぐに自分の経験に引きつけて、こう決めました。

「そうだ、テニスのサーブを打つとき、ボールを2つ持つのはやめよう。1つだけ持って、1球勝負でファーストサーブを打つぞ!」と。

以来、いまに至るまで、この言葉はテニスに限らず、私の仕事を支える大きな支えとなっています。

このように本を自分の経験に引きつけて読むと、ただ文字を追うのと違って、メタ的に「さあ、この知識をどう実践しようか」と思考するようになります。

本の文脈と自分の人生の文脈。2つを重ね合わせるのが、「メタ思考読書」です。

このように本を読むことができれば、メタ思考が鍛えられること、間違いありません。

齋藤 孝 明治大学教授

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さいとう たかし / Takashi Saito

明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。同大学院教育学研究科博士課程を経て現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞。日本語ブームをつくった『声に出して読みたい日本語』(草思社)で毎日出版文化賞特別賞。著者累計発行部数は、1000万部を超える。テレビ出演多数。

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