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ライフ #獣医病理医からみた「動物の話」

苦しい抗がん剤治療を受けた意味はあったのか、あの子は幸せだったのか…リンパ腫を患った愛犬の死。その体が飼い主に教えてくれた「本当のこと」

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  • 中村 進一 獣医師、獣医病理学専門家
  • 大谷 智通 サイエンスライター、書籍編集者
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そのように獣医病理医としての見解をお伝えすると、当初はひどく後悔されていた飼い主さんでしたが、ミニチュアダックスの死に少しずつ納得されていったご様子でした。

病理解剖しなければずっと悩んでいた

最後に飼い主さんは、「病理解剖をしなければ、つらいがん治療に意味はあったのか、私たちの行動の何がよくて何が悪かったのか、結論を得られないまま、ずっと悩んでいたと思います。先生に病理解剖をお願いしてよかったです。本当にありがとうございました。どれだけ感謝してもしきれません」とおっしゃいました。

ペットとの死別は、飼い主さんにとって非常につらい出来事です。ただ、その死の原因がはっきりとわかれば、現実に向き合いやすくなります。

「納得できる死」は「理由がわからない死」よりも、たいていの場合、気持ちの整理がつきやすく、乗り越えやすいものです。

ミニチュアダックスががん治療を頑張りながら飼い主さんと過ごした最後の1年は、何もしないでいた場合よりも、ずっと幸せな時間であったことでしょう。病理解剖を通じて、僕はそのことを確信しています。

がん治療にはつらい副作用がつきものです。しかし、それを上回るかけがえのない時間と多くの幸せを、このミニチュアダックスと飼い主さんにもたらしていたはずです。

そのことを飼い主さんにきちんとお伝えすることができたこと。そして、ペットの死を納得して受け止めた飼い主さんから深く感謝されたこのエピソードは、僕が獣医病理医という仕事を続けていくうえでの、心の支えの1つとなっています。

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