23区なのに"時代に取り残された"ようにひっそりと佇む街「京成立石」。駅前の大規模再開発で消滅する「のんべえ文化」の最後を歩く

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食事をしたときには気づかなかったが、面白い話だ。早速、戻って確かめてみたが、建物が道路より低いなんてことは全然なかった。さっき話し込んだ地元民の勘違いらしい。ただ、この勘違いが妙に心に残った。

想像するに、あの人は親世代から同じような話を聞いて、そのままに記憶を植え付けたのだろう。かつては本当に道路より低かったのかもしれない。件の店の姿は長年日常的に目にしているのだが、それがあまりにも日常すぎて、いったん定着した思い込みは上書きされないまま、時間が過ぎた。

勝手な想像だが、たぶんそんなことだろうと思う。逆にこれが、地域とそこに住む人たちの結びつきの強さをあらわしているようにも思えるのだった。

「立石仲見世」の駅側の入口には平日の昼間から2つの行列があった。並んでいる人たちの様子から「パチンコ屋かな」と思ったのだが、それらしき店はない。

実は「立石仲見世」には駅側からの入口が2つある。向かって右の入口にあるのが、知る人ぞ知る立ち食い寿司の老舗「栄寿司」(葛飾区立石1-18-5)だ。丁寧な仕事の江戸前寿司がほぼ回転寿司価格で味わえる。行列のひとつはこれ。

栄寿司
立ち食い寿司の老舗「栄寿司」(筆者撮影)

もうひとつの行列は、その斜向かいにある「宇ち多(うちだ、「だ」の漢字は「多」に「゛」)」(葛飾区立石1-18-8)だ。ここも知る人ぞ知る名店だ。14時開店で、閉店19時の5時間しか営業しない。さっと注文して、ビールや焼酎をさっとひっかけ、さっと帰る。粋なのんべえたちで連日賑わっている。

「宇ち多」の出口
「宇ち多」の出口。この反対側に入口がある(筆者撮影)

京成立石の生き字引登場

店の軒先に、小銭の入ったザルがぶら下がっている。平成人や令和人には馴染みは薄いだろうが、昭和人の筆者にとっては当たり前の光景だ。

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