23区なのに"時代に取り残された"ようにひっそりと佇む街「京成立石」。駅前の大規模再開発で消滅する「のんべえ文化」の最後を歩く

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昼時を過ぎて腹が減っていたので、商店街からワンブロック離れた場所の、古くからやっているとおぼしき食堂の暖簾をくぐった。

かつおたたき定食、かんぱちさしみ定食、豚肉しょうが焼き定食、牛スタミナ焼き定食などを770円(税込)で提供してくれる店だ。店主によると、建物は昭和の一桁代からあるらしい。店は昭和42年頃からやっているというから、もう60年近い歴史を持つ。包丁を握るのは2代目だ。

マップ
赤くマーキングしたあたりを歩いた(国土地理院 電子国土Webから筆者作成)

牛スタミナ焼き定食をいただいたあとに、取材のお願いをしてみると「店名とか私の名前は出されちゃ嫌だけど、話ならするよ」。店や料理の写真についても「恥ずかしいからやめてね」とのこと。

「こっちがわ(駅の南口界隈)も、令和10年から工事が始まるっていうから、その頃には店を閉めなきゃいけない。後のことはまだなあんにも決まってないよ。新しいビルに店を出すなんてこともない。そもそも家賃が払えないしね」(店主)

L字のカウンターには7〜8人が座れる。ほかに4人がけのテーブルのある小上がりがひとつ。入口近くのテレビでは高校野球の中継が放送されている。時刻は平日の午後2時すぎ。客はひっきりなしで、皆ウイスキーのソーダ割りやチューハイを注文する。「トイレは」と腰を浮かすと、「その奥だよ」と常連客が指に挟んだ煙草をかざして教えてくれる。そんな店だ。

「今でものんべえにはいい街だよ。これからどうなるかわからないけどね。店はまだ2~3年はやるつもり。その間に先のことをゆっくり考えますよ」(店主)

駅から歩いて数分の場所にあるこの店、興味があったらぜひ探してみるといい。料理の味は少し濃いめで酒のアテにぴったりだ。

地元のことは地元の不動産屋に聞け

今回話をうかがったのは駅の南側にある「日商不動産株式会社」(葛飾区立石1-22-8)だ。代表取締役の眞壁良幸さんはこの地で40年のベテランである。

日商不動産
毎度話を聞いている地元の不動産屋。今回は「日商不動産株式会社」さんに話を伺った(筆者撮影)
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