感染者は3年前の10倍以上!「百日咳」爆発的流行に潜む原因は「ワクチン効果の誤解」だった?――特に乳児は重症化しやすいので注意が必要

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その理由は、「ワクチンの効果が接種後数年で切れるから」です。

予防接種は子どものころに受けておけば、一生追加接種は必要ないと考えておられる方がほとんどです。実際、麻疹などのように一生もつと考えられるものもありますが、数年で切れるものもあります。

そこに百日咳の忍び込む余地があるのです。

百日咳はどんな感染症か

百日咳は、感染した人の咳やくしゃみによる飛沫を介してほかの人に感染します。そのため、家庭内や学校などの集団生活の場で感染が拡大しやすいです。 

百日咳の存在が知られるようになったのは、100年以上前のことです。

免疫学者であるジュール・ボルデ(Jules Bordet)は、百日咳にかかった自身の子どもの痰から、1906年に細菌を分離培養することに成功しました。この細菌はボルデの名前をとって“Bordetella pertussis”と名付けられました。Pertussisはラテン語で「激しい咳」を意味します。

この名が示す通り、百日咳は咳を主体とする症状が特徴の感染症です。百日咳菌が作り出す毒素が、ヒトの気管の粘膜にくっつくことで、症状が起こると考えられています。

表れる症状は、年代によって少し異なります。

乳幼児が百日咳菌に感染すると、潜伏期間を経て7~10日後に風邪のような症状が始まります。そして次第に咳が激しくなります。

やがて発作的にけいれん性の咳が表れます。連続する短い咳のあとに、息を吸うときに「ヒュー」と笛のような音が出るのが特徴です。この咳発作では、嘔吐を伴うこともあります。

発熱はほとんどありませんが、咳の影響で顔がむくんだり、皮膚に点状出血が出たり、白目が出血したり、鼻血が出たりすることもあります。発作がないときは無症状ですが、刺激で誘発されやすく、特に夜間に多く見られます。

回復してくると激しい咳発作は徐々に減り、2~3週間で治まりますが、その後も時折咳が出ることがあり、完全に治るまでは2~3カ月かかります。

ただなかには、こうした典型的な咳が見られず、無呼吸発作からチアノーゼ、けいれん、呼吸停止へと進行することもあります。肺炎や脳症を合併すると致死率が高くなるので、注意が必要です。

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