感染者は3年前の10倍以上!「百日咳」爆発的流行に潜む原因は「ワクチン効果の誤解」だった?――特に乳児は重症化しやすいので注意が必要
一方、成人では症状が軽く、典型的な発作的な咳は見られにくいものの、症状は長期間持続しやすいです。軽症のため見逃されがちですが、咳とともに細菌を排出するため、ワクチン未接種の乳児への感染源となる危険があり、気を付けなければなりません。
前述したように、百日咳はワクチン接種が推奨されている感染症です。
ワクチンには生ワクチン、不活化ワクチンなどいくつかの種類がありますが、現在、日本で用いられているのは「無細胞型百日咳ワクチン」という不活化ワクチンです。
無細胞型は、原理的には百日咳菌の毒素の働きを抑えるもので、百日咳菌が鼻やのどの粘膜に感染するのを防げません。そのため、それまで使われていた全細胞型百日咳ワクチンと比べて副反応が少ない一方、感染を予防し、病気の広がりを防ぐ効果は低いと考えられていました。
しかし、スウェーデンでは、1979年にそれまで使われていた全細胞型を中止したことで百日咳の流行が起きたため、1996年から無細胞型の接種を始めたところ、百日咳の患者数は10分の1程度にまで減少しました。
したがって、現在は全細胞型よりは弱いものの、無細胞型でも百日咳の集団免疫は成立し、感染拡大を防ぐ効果があると考えられています(とはいえ、副反応が少なく感染予防効果が高いワクチンの開発は必要です)。
ワクチン接種で0歳児を守る
現在は予防接種として、生後3カ月から5種混合ワクチン(百日咳、破傷風、ジフテリア、ポリオ、ヒブ)の定期接種を行い(標準的では生後6カ月までに3回接種)、そのあと生後12~18カ月に1回、追加接種することになっています。
実は、百日咳による症状が最も重くなるのは、ワクチン未接種で免疫力がない0歳児です。命にも関わることがあります。アメリカとオーストラリアのデータでは、百日咳に関連する入院患者の60%以上が、1歳未満であることが示されています。
新生児を百日咳から守るため、2012年以降に多くの国々で始まったのが、母親への予防接種です。
2015年には、世界保健機関(WHO)が無細胞型百日咳ワクチンによる母親への予防接種を公式に推奨しました。2020年までに、日本を含め55カ国で母親への予防接種が推奨されています。
通常は、妊娠第2期または第3期にワクチンを接種します。母親への予防接種は新生児を百日咳から守るうえで非常に有効で、百日咳のリスクを70~95%減少させることが推定されています。
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