感染者は3年前の10倍以上!「百日咳」爆発的流行に潜む原因は「ワクチン効果の誤解」だった?――特に乳児は重症化しやすいので注意が必要
接種するワクチンは、多くの国では成人用3種混合ワクチン(Tdap:破傷風・ジフテリア・百日咳)です。こちらのほうが、発熱などの副反応が少ないためより望ましいのですが、日本では未承認で、通常の3種混合ワクチン(DPT)を用いるしかありません。日本国内での開発が待たれます。
妊婦さん以外にも打ってもらいたい方たちがいます。それは、新生児や乳児に接する周囲の人たちです(任意接種のため自己負担になります)。
一般的にワクチンの効果は4〜12年ほどで低下します。そのため、大人は子どものときに接種したワクチンの効果がすでに失われていて、百日咳菌に対する免疫が低下しています。ですから、新生児や乳児に接する周囲の人たちはワクチン接種をして、赤ちゃんを百日咳から守ることが望ましいのです。
しかしながら、日本では新生児や乳幼児に接する医療者ですら百日咳のワクチンの追加接種は行われていません。憂慮すべきことで、すぐに対策をとったほうがいいと筆者は考えます。
1933年に開発された百日咳ワクチン
ここから少し百日咳の予防接種の歴史について触れます。
百日咳ワクチンの歴史は古く、アメリカで1933年に百日咳菌を不活化(感染力を失わせること)した全細胞型百日咳ワクチン(whole cell pertussis vaccine:wP)が開発され、1944年にはアメリカ小児科学会の感染症委員会が接種を推奨しています。
日本には1950年に全細胞型の単独接種が始まりました。
その後、1958年にはジフテリアと全細胞型百日咳を組み合わせた2種混合ワクチンの接種が始まり、1964年には破傷風を加えた3種混合ワクチンが一部自治体で、1968年からは全国で定期接種として開始されました。
ワクチンは効果があり、1972年には百日咳の患者は大幅に減少しました。一方で、全細胞型は副反応が強いことが問題視されていました。1975年には3種混合ワクチンの接種後に2人が死亡したことで、接種が一時中断されました。
より副反応の弱いワクチンの開発が必要で、世界に先駆けて日本の国立予防衛生研究所(現・国立感染症研究所)で百日咳菌から毒素を分離し、その毒素に対する免疫が得られる無細胞型百日咳ワクチン(acellular pertussis vaccine:aP)を開発しました。
1981年には改良型の無細胞型3種混合ワクチンの接種が開始。1991年にはアメリカでも導入され、現在ではヨーロッパ諸国、カナダ、オーストラリアなどで広く用いられています。
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