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「助産師を舐めるな」ーー彼女が起業した切実な理由 救えなかった"いのち"への悔しさが原動力、産後の母子をサポート、目指すは“現代の産婆”

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「THE CARE」の課題は「従業員が50人以下の中小企業にも、継続的に使ってもらえるようなサービスにすること」。年間コストが最低約60万円であるこのサービスは、社員の人数が少ない会社の場合、1人単価の費用がかさむため継続しづらいのだという。

また、「男性社会が残りがちな地方にこそ必要な仕組みです」と岸畑さんは言う。「地方でキャリアを構築できる仕事を見つけられなかった女性は、都市部に流出します。そうすると、男性優位の経済社会が地方に残り続けてしまい、女性は地元で働けない状態が進みます。性別でエリアの分断が加速し、少子化も深刻になっていくのです。私はこれを自分事として変えたいと思っています」。

岸畑さんは自治体に出向き、連携して地域の企業にサービスの提供ができないかと促している。各地で「THE CARE」のサービスが広がれば、地域密着型のウェルネスコーディネーターが生まれ、地元企業に貢献する循環ができていくという。

「誰もが安心して出産・育児ができる社会」を目指して

起業当初は助産師資格を持つ3人の創業メンバーだけだったが、現在は経理や広報などの社員が増え、13名で稼働している。「THE CARE」を担うウェルネスコーディネーターも約20人にのぼる。助産師、看護師、保健師の知識や情報をアップデートさせるべく、同社は独自のライセンスをつくり、セミナーや交流会も行っている。

広報の本間万鈴さん(左)と岸畑さん(中央)、CCOの竹﨑澪さん(写真:筆者撮影)

昨年の年商は約8000万円に到達。ビジネスとして手ごたえは感じるものの、「稼ぐことが本質ではない」と岸畑さんは言う。

「うちのKPIは売り上げではなく、『ケア提供件数』なんです。助産師が社会にケアを提供する流通量を評価の指標にしています。目標は2030年までに100万件!……途方もない数字です(笑)。でも、決めたからにはやります」

昔の日本では、地域で「産婆」と呼ばれた助産師たちが、妊娠、出産、育児などを支えていた。岸畑さんは、そのシステムを現代に復活させようとしている――。

今でも隔週で助産師として臨床で働いている岸畑さん。たったひとつのいのちも取り残さない未来を目指す彼女は、今日も走り続けている。

【写真】岸畑聖月さん、奮闘の様子など(8枚)
今も岸畑さんは病院勤務を続けている(写真:With Midwife)

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