ただ、上場準備を進める中で、8月下旬に日経平均株価が2万円を割り込むなど、株式市場の地合いが悪化。想定どおりの上場益を稼げるか、不透明感が漂い始めていた。降って湧いたコムキャストへの売却話は、まさに渡りに船だったのである。
大損が出ない仕組み
一方、買い手であるコムキャストにとって、本国を上回るUSJの集客力は垂涎の的だった。ブライアン・ロバーツ会長は発表会見で、「今後も投資を続け、家族が楽しめるアトラクションを提供する」と意気込みを語っている。
だが、不安がないわけでもない。「進撃の巨人」「妖怪ウォッチ」など、アニメやゲームの版権を取り込む独自路線を主導してきたUSJのグレン・ガンペルCEO(最高経営責任者)は、今回の買収に伴って退任。米国などでテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ」を手掛けるユニバーサル・パークス&リゾーツのジャン・ルイ・ボニエCFO(最高財務責任者)が後任に就任する見込みだ。
これにより、日本の独自路線が影響を受け、ひいては回復基調にあるUSJの業績にもマイナスに働くのではないか、と危惧する声が上がっている。
こうした中、市場関係者の間では、こんな“憶測”が浮上している。日本での事業が想定どおりにいかなかった場合、コムキャスト主導でUSJを再上場させ、今回取得した株を売却するのではないか、というものだ。1830億円の出資であれば、仮に成長が鈍化し、再上場時の株式の時価総額が約7000億円から半減したとしても、大きな損は出ない。
この先、USJはいかなる道を歩むのか。それはひとえにコムキャストの胸先三寸で決まることになる。
(「週刊東洋経済」2015年10月10日号<5日発売>「核心リポート02」を転載)
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