【産業天気図・海運業】大手の足を引っ張ったコンテナ船が底打ち。07年度は好転へ

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業界環境は好転している。06年度、準大手以下は後半から「晴れ」模様が目立ってきたが、日本郵船<9101.東証>、商船三井<9104.東証>、川崎汽船<9107.東証>の大手3社が「曇り」から脱し切れず、全体では薄日が差す程度の「曇り」にとどまってきた。しかし、07年度は大手3社でも収益好転が期待され、現時点では年間を通じて「晴れ」が見込めそうだ。
 海運業の業績を左右する「荷動き」「運賃市況」「為替」「燃油価格」の4要因のうち、荷動きは米中などの世界経済が大崩れしない限り、引き続き高水準を維持。運賃市況は船種や船のサイズ、季節によって異なり、たとえばドライバルクを運ぶバラ積み船は絶好調、一方、原油やガスを運ぶタンカーは北半球暖冬の影響で軟調などまちまちだが、06年度に大手3社の足を大きく引っ張ったコンテナ船が欧州航路を中心に運賃回復傾向を強めているのがプラス要因になりそうだ。為替や燃油価格も06年度程度の水準で推移するなら、業績の下押し要因にはならない。
 加えて、大手3社では日本郵船が80隻、商船三井が61隻、川崎汽船が25隻と新造船竣工が引き続きピーク。いずれも低船価時期に発注した船だけに、収益カサ上げ要因として期待できる。準大手の第一中央汽船<9132.東証>、新和海運<9110.東証>、飯野海運<9119.東証>の3社については、そもそもコンテナ船部門を持たないことから、タンカー部門が多少軟調でもバラ積み船部門の絶好調で補い、運賃市況や為替・燃油価格の動向次第では「快晴」となる可能性も少なくない。
 もっとも、個別企業の事情を見比べると、日本郵船では05年に子会社化した日本貨物航空が07年度も赤字脱却はならず、足を引っ張りそう。飯野海運では、海運に次ぐ大きな収益柱となっている不動産賃貸部門で、本社も入居する「イイノビル」の建て替え準備が始まり、連結収益は伸び悩む。
 とはいえ本業の海運に関する限り、各社とも、直近ピークの04年度ほどの勢いはないものの、好天を享受できることは間違いなさそうだ。
【大滝俊一記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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