カネがなくても戦える!売上高J1ブービーの「湘南ベルマーレ」が快進撃を続けられる"納得の経営"

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山口監督が優れていたのは「相手を見てサッカーをする重要性」を選手に植え付けたこと。もともと湘南の選手は「一生懸命戦う」「必死に走る」といったことには長けていたが、相手の出方を観察しながら判断を変えるといった柔軟性に課題があった。

ある意味で“一本槍”の面々を、いかにして“臨機応変な対応のできる人材”へと変化させていくのか――。山口監督はその命題に辛抱強く取り組んだ。

そんな試行錯誤の中から、3月20日の2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選・バーレーン戦のピッチに立った町野修斗(キール)や、2024年11月の同予選・インドネシア戦に出場した大橋祐紀(ブラックバーン)のような日本代表選手も育ってきた。

かつては湘南に所属し、現在は海外で活躍する大橋(左)と町野(左写真:REX/アフロ、右写真:picture alliance/アフロ)

「町野が(横浜F・)マリノスや(ギラヴァンツ)北九州を経て、湘南に来たのは2021年。21歳のときでした。もともと持っているものは間違いなかったのですが、メンタル面や考え方がまだ固まっていないところがあるように感じていました。山口監督の指導を受ける中で頭が整理され、やるべきことがハッキリした。それが2022年の大ブレークにつながったと思います」

坂本社長は神妙な面持ちで言う。そのうえで、こう続けた。

「大橋は2019年に中央大学から来た選手。入団当初は力みがあり、ケガも重なって3年ほど力を出せない時期が続きました。しかし、山口監督との出会いによって自分のタスクや気持ちの部分がスッキリして、2022年から2023年にかけてのゴール量産につながったんだと思います」

貧乏クラブの宿命

今季も、2024年シーズンにJ1で2桁ゴールを記録した21歳の新キャプテン・鈴木章斗が力強くチームを牽引している。彼は大阪の阪南大学高校からプロ入りして、わずか3年でエースに躍り出たのである。

「章斗に関しては、高校サッカー選手権に出ていた2021年の時点で『3年後までにはレギュラークラスになってほしい』とプランニングしていました。彼は天性の空間認知能力とサッカーセンスがあり、そこを伸ばしつつ、フィジカル面の課題を克服できるよう、スタッフが親身になって取り組んでくれました。2023年の途中にJ3のYSCCから加わり、昨季2桁得点を挙げた福田翔生もそうですが、選手を伸ばしながらチームを形成していくことに山口は長けている」と坂本社長は胸を張る。

しかし、若くて伸びしろのある選手が現れると、ほかのJクラブ、あるいは海外クラブに引き抜かれてしまうのが、資金力の弱い湘南の根深い悩みでもある。

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