《全品270円》で大繁盛の居酒屋「金の蔵」、“現存するのは1店舗”に。7期連続赤字から再起をかける新事業は「金の蔵」とは真逆の意外な店
2021年11月に漁業協同組合から漁船を承継取得すると、船舶免許を取得した社員自らが自社船での漁に取り組む。同年同月には浜松市中央卸売市場にある仲卸「株式会社SANKO海商」が、2022年7月には豊洲市場に7社しかない大卸「綜合食品株式会社」が傘下に加わり、水産事業のサプライチェーン化が進む。生産地との密な提携は、農水省の目に留まり、官公庁の食堂の運営受託も任されるようになった。
気づけば、サンコーでは、生産(1次)、流通・加工(2次)、小売・外食(3次)を網羅した、水産6次産業モデルが構築されていく。水産事業の売り上げは2022年6月期こそ9900万円にとどまるが、2023年6月期で44億5600万円、2024年6月期で55億9400万円まで膨らんだ。先行投資がかさんだ影響で、目下、営業利益は赤字が続くものの、水産事業は社の中枢事業に成長した。
刺身を「注文後にカット」できるようになった
こうした経緯を踏まえ、話を湘南台酒場に戻すと、金の蔵から様変わりした姿も腑に落ちる。
「湘南台酒場は、当社として初めて、水産事業のチームに運営を任せている店舗です。つまり、金の蔵のような飲食事業に携わっていた社員ではなく、魚産地の加工や流通に長けた人員を配置しています。
飲食事業の人材に任せると、お恥ずかしい話、どうしても加工や調理技術に欠けてしまう。オペレーションの観点から、仕込みのため刺身をカットしてしまい、結果的に鮮度の高いメニューを提供しづらくなる。
一方で、水産事業のメンバーが店舗で稼働すれば、注文が入ってから魚を調理できる。他にも、産地ならではの食べ方を提案したり、水揚げされた鮮魚を運んだりと、接客の垣根を超えてマルチに活躍できる人材を配置することで、来店者の満足度も向上していく」
長澤氏は、こうした店舗を“水産の6次産業モデル型”と称する。川上の生産から川下の外食まで、シームレスな連携を可能にすることで、水揚げから店舗での提供を24時間以内に実現。従来は難しかった未利用魚のメニュー化にも成功し、新たな儲けの源泉も生まれた。

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