《全品270円》で大繁盛の居酒屋「金の蔵」、“現存するのは1店舗”に。7期連続赤字から再起をかける新事業は「金の蔵」とは真逆の意外な店
遡れば、2020年からのコロナによりサンコーも、例に漏れず倒産の危機に瀕した。とりわけ150~200坪の大箱を、山手線の内側にドミナント出店していた同社にとって、度重なる営業時短要請は深い痛手だった。一時期は、賃料で月5億円近くが飛んだという。
2018年から社長に就く長澤成博氏は、足元の出費を食い止めるため、やむなく大量閉店を決断する。金の蔵ブランドは、2019年6月期の59店舗から、2021年6月期には9店舗まで縮小し、採算が取れる路面店のみを残した。

当然、業績は急降下した。売り上げは、2019年6月期(2018年7月1日~2019年6月30日)の107億100万円から、2021年6月期は21億200万円に激減。コロナ以前まで、業績の約8割を金の蔵ブランドに頼っていた同社にとって、あまりにも代償は大きかった。
同様に、長澤氏を悩ませたのは、160人近い従業員の雇用をどう確保するかだった。一策として、飲食店に向けた除菌やメンテナンスを請け負う清掃事業を立ち上げたものの、穴を埋めるには至らなかった。
人手不足の漁協と利害が一致
頭を抱えていた時期に、長澤氏ともともと付き合いのあった知人を介して、静岡県の「沼津我入道漁業協同組合」から声がかかる。
「コロナ禍に突入した頃、沼津の方々から『地元を盛り上げてほしい』と話をいただきました。聞けば、沼津は漁師の後継者不足が深刻で、地元の水産業が回らなくなりつつある状況だった。そこで飲食業の我々に、店舗で沼津の魚を活用してほしいという要望や、さらに踏み込んで加工や仲卸も手伝ってほしいと依頼を受けました。
弊社としても、当時は四の五の言っていられる状況ではなかった。人助けをしている場合ではないが、雇用創出に苦戦する状況もあり、沼津で面倒を見てもらおうと水産事業に乗り出しました」
双方ともに深刻な状況下で、すぐに話は進んだ。サンコーは2020年9月、沼津我入道漁業協同組合と業務提携を結び、同年12月に組合員となる。以降、金の蔵の現場社員らは、漁師の指導を受けながら市場で魚を買い付けたり、養殖鯛を小中学校の給食用に味噌漬けにしたりと、手探りながらも依頼を極力引き受けた。
いわば便利屋のように、地元の幅広い相談を請け負ううち、自然とネットワークが広がっていく。

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