武蔵境の老舗家系ラーメン店「大山家」。「オープンから3年は常に赤字」「公共料金もギリギリ」だった店を救ってくれたのは"祖母の味"だった

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公共料金を払うこともギリギリの状態だったが、製麺屋などの業者さんは「絶対うまくいくから大丈夫だ」と励まし続けてくれた。

ラーメン 大山家
(筆者撮影)

その頃に作ったメニューが今の看板メニューである「とき卵ラーメン」だ。祖母が即席ラーメンに卵をよく入れていて、これが大山さんの思い出の味だった。これをヒントに、家系ラーメンにとき卵を合わせるという斬新な一杯を作り上げた。

スープ、タレ、卵がそれぞれ引き立つように、ふわとろで絶妙な一杯に仕上げた。はじめはお試しで出していたが、データを見ると杯数が多く、ひそかな人気メニューになっていた。

この頃、母が入院し、病院に行く回数が増え、店を休みがちになり売り上げが落ちていた。コンサルタントに相談をし、外観を変えるなど工夫をして売り上げの回復を図る中で、「とき卵ラーメン」を看板メニューにする案が出てきた。他では食べることのできないとき卵ラーメンが「大山家」を一気にブレイクに導いていく。

雑誌で紹介されて、一気に有名店に

ラーメン 大山家
「大山家」の名物メニュー・とき卵ラーメン(筆者撮影)

とき卵ラーメンを看板メニューに据えるや否や、一番落ち込んだ時からは4倍の売り上げになる。雑誌『TOKYO一週間』で紹介されてからは取材も相次ぐようになり、「大山家」は一気に有名店になった。

人気になると当然他の店からマネされるようになったが、それも一瞬で淘汰された。とき卵ラーメンはそう簡単に美味しくならないのである。

ふわとろに仕上げるのがとにかく難しい。これは今も門外不出のテクニックで、結局「大山家」は唯一無二になった。これはオープンから25年以上経った今でもだ。

ラーメン 大山家
「ラーメン 大山家」の店主・大山修司さん(筆者撮影)
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