新人教育や評価もAIにお任せの時代? 「上司よりAIから評価してもらいたい」と考える部下も AI時代にも無くならない「上司力」を考える
しかし、AIが人の成長プロセスを完全に数値化することは難しい。学習履歴や研修受講状況はデータ化できるが、それを実際の業務でどのように活かしているのかまでは把握しきれない。
次に、情意評価の問題点だ。情意評価とは、組織の一員としてどれだけ貢献しているか、協調性や責任感を持って仕事に取り組んでいるかを評価することをいう。
たとえば、ある社員がチームの雰囲気を良くするために積極的に発言し、困っている同僚を助けているとする。しかし、このような行動をAIが正確に測るのは極めて難しい。メールやスラックに書かれた文面、返信率、会議での発言回数だけでは、社員の本当の貢献度を把握することはできない。
誰も知らないところで、チームのメンバーに声をかけている人、落ち込んでいる人に目くばせする人、そっと近くで寄り添ってあげる人……。
その人が、その場にいるだけで緊張したり、心が和んだり、ピリッとしたりする。そのような感覚値まですべて認知できるのか。不可能だ。
実際に私の知人は、(本人曰く)何も問題を起こしていないのにYouTubeチャンネルのアカウントが停止となった。普通の時計を出品しただけなのに、勝手にフリマアプリに出品を削除されたという人の話も聞いた。
私も実際に経験している。なぜか音声コンテンツに関する投稿をすると、必ずFacebookに自動削除される。何度やっても同じ。XやYouTubeでは問題なく投稿できているのに、である。
SNSプラットフォームの評価システムがどのようになっているか、私にはわからない。繰り返し問い合わせれば誤解だと分かってもらえるかもしれない。
しかし会社の査定が、このように納得いかないものだったら、どうか?
「私は決してこの評価に納得できません」
と言っても、上司に評価スキルが足りなければ、このように判断するのではないか。
「AIが君を評価しなかったんだよ。AIが間違えるはずがない」
先述した通り、何度やっても私の投稿がFacebookに自動削除される。この話をすると、必ず何人かは、
「横山さんが過去に、何かやばい投稿をしたんですよ」
「アクティブユーザーが30億人も超えるFacebookが、間違えるはずがない」
と指摘してくる。あまりにそういわれると、私自身も「そうなのか?」と思えてくる。何が真実か、分からない。ただ、納得いかないことは間違いない。最近の私はFacebookに興味がなくなり、XやYouTubeを積極的にやるようになった。
評価はとてもデリケートなものだ。AIが補助をするのはいいが、最終判断は人間がすべきだ。そうしないと、納得のいかないメンバーは、会社側を信用しなくなるだろう。
成果評価だけであればAIの活用は可能かもしれない。しかし能力評価や情意評価までAIに任せるのは非現実的だ。社員の成長や組織の健全な運営を損なうリスクがある。AIの導入はあくまで補助的な役割にとどめ、最終的な判断は人間が行うべきだ。
AI時代に決して無くならない「上司力」3つ
最後に、AI時代に必要とされる上司力を3つ挙げたい。
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