新人教育や評価もAIにお任せの時代? 「上司よりAIから評価してもらいたい」と考える部下も AI時代にも無くならない「上司力」を考える
「直属の上司よりも、AIから評価してもらいたい」
以前なら考えられなかった発想だが、実際にそう考える部下は増えている。背景には3つの変化があると考えられる。
まずビジネスの変化スピードが早まっていることについて。教育内容をドンドン更新していく必要があるのに、はたして教育者である上司はついていけているだろうか。上司が新人に教えたことが、1年後には役立たないかもしれない時代なのだ。
「去年作った教材の半分は、もう使い物になりません」
あるSaaS企業の教育担当が嘆いていた。せっかく教材を作っても、あっという間に使い物にならなくなる、というのだ。それなら膨大なデータを持つAIに新人教育を任せたほうが早い、ということだ。
また多様な働き方が進むと、1人ひとりと向き合う時間がますます減っていく。部下が相談したいときに上司は近くにいないし、上司も部下を気に留めるきっかけをつかめないまま日々が過ぎていく。
「新規の営業先に対してどんな準備をしたらいいか。上司に相談するより、ChatGPTに聞いたほうが的確でした」
そうバッサリ言う若手営業がいた。
「お客様の業界がドンドン変化しているのに、昔ながらの戦略や方針を変えようとしない営業部長から、教わることなんてビールのつぎ方ぐらい」
ここまで言い切るZ世代の若者もいた。
そして最も大きな理由が「評価の複雑化」だ。若者の価値観はドンドン多様化し、複雑化している。考え方や価値観が異なる上司からよりも、膨大なデータをもとに多角的に評価できるAIの存在は、部下にとっても魅力的だ。
AIに評価を任せられない2つの要素
しかし、本当に評価をAIに丸投げしてしまっていいのだろうか? 私はそう思わない。
「上司の育成スキルや、評価スキルなんてもう必要ない」
そんなことを口にする有識者もいるが、鵜呑みにすべきでないだろう。AIの普及が進んでも、「人間・上司」としての能力は必要だ。その中でも「評価」は特に重要だ。
なぜなら、その人がどのように職場へ貢献しているのか。そのデータをすべてトレースすることなど、現実的ではないからだ。
人事評価には、大きく分けると「成果評価」「能力評価」「情意評価」の3つの要素がある。その中で、能力評価と情意評価はAIが正しく判断するのが極めて難しい。
まず、能力評価の問題点について考えてみよう。能力評価とは、単に現在のスキルを測るものではなく、どれだけ成長したかを評価するものだ(現在の能力を評価してしまったら、レベルが高い人の評価が高止まりしてしまう)。
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