その当時、ハラスメントリスクの高まりを踏まえ、異性の上司と部下がふたりきりでお酒の席に出かけるのは避けた方がよい、と会社から教育を受けていました。でも彼は平気でふたりきりで出かけます。「リスクがないからだ」と彼は言います。
私とも何度も出かけてもらいましたが、記憶をなくすくらい飲んでも、帰宅が一緒の方向でも、タクシーは別だし、大概は一次会でとっとと帰ってしまう人でした。話題も豊富で、失敗した可愛らしい笑える話なんかもしてくれて、人としては隙があるんです。でも、男性としてアプローチする隙はまったくない。こちらもアプローチする気はないわけだけれど、酔った勢いとか、逆に女性社員サイドがなんだか危ない香りを感じるとか、そういうことがまったくないわけです。
個人的な感情を持つことのデメリット
本当に仕事のできる上司は、直属の部下と恋愛なんてしないのかもしれない、と私は思いました。もし、個人的な感情がひとりの部下にあったら、どうやって公平に評価ができるのでしょう? どんな風にチームを居心地よく整え、成果を指向していくのでしょう? 冷静に考えてみれば、上司としての仕事をしている人がひとりの女性部下に心を奪われることは、やはりNG以外の何物でもありません。
ある別の男性管理職が、「部下からは惚れられる一歩手前、くらいでコントロールする」と言っていましたが、「そんなにうまくいくかよ」と私は思ってしまいました。部下からの愛情をアテにした職場運営なんて、リスクが高すぎるし、一歩間違えたら大変な職場になり下がってしまう。
私の尊敬する上司は、自分が部下の「成長」のために愛情を注ぐことはしても、部下からの愛情などまったく求めていないのです。それでも女性同士の感情のもつれ、職場環境の悪化を考え、彼なりに「こちらからは誘わない」というルールを決めていると教えてくれました。「話をしたいと言われればいつでも時間をとる」と言い切り、事実、誰が携帯電話に連絡してもメールを送っても、時間を置かずに連絡がつくことがほとんどなのです。そして、よくよく考えると、随分と長い付き合いで弟子以外の何物でもない私でさえ、「メシいかない?」と彼から誘われたことは、私が会社を辞めたときくらいのものだったような気がします。
つまり、あなたの恋心は、もし彼が本当にすばらしい上司だったら、伝える隙は与えられないのではないか、と私は思うのです。もっと言うとあなたの気持ちは薄々伝わっているのではないかとも思います。
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