IT企業は「ミスを犯すドライバー(人)をコンピュータ・プログラムのバグ」と考えているらしい。つまり、バグを取り除くことはIT企業の常道であり、自動化(ロボット化)による自動運転は当然の進化だと信じている。事故のない未来を創造することがITの雄であるグーグルの責務だと考えているようだ。
グーグルは無人の自動運転車を試作し、話題を集めたが、自動車メーカーは無人車をつくろうとは考えていない。ただし、レベル5で規定される無人車のニーズは少なくない。たとえば、ショッピングセンターの駐車場におけるオートヴァレー(自動パーキング)は技術的にはすぐに実現可能だ。
ドライバーは降車位置で車を離れ、あとはスマートフォンで遠隔操作するだけでよい。車は自動的に空きスペースを探して駐車する。無人ゆえにドアの開閉が不要なので、駐車場の土地は少なくて済む。買い物を終えたら、遠隔操作で車を呼び出せばいい。駐車場内を歩き回る必要がないので、足腰の弱った高齢者にとってもありがたい。
ショッピングセンター内の駐車場は公道ではないため、技術的な問題さえ乗り越えれば理論的にはレベル5の無人車を実用化できなくもない。こうしたアイデアは既存の自動車メーカーよりもIT企業のほうが柔軟だ。
もうひとつ見逃せない動向は、米国防高等研究計画局(DARPA)だ。10年以上も前から、自動運転車によるデモンストレーション・レースを主宰し、産学連携チームが参加して技術を競っている。ゼネラル・モーターズとカーネギーメロン大学のチームや、フォルクスワーゲンとスタンフォード大学のチームがつねにトップを争っていた。こうした研究の成果は民間だけでなく、軍事にも利用される。GPSやミリ波レーダーやカメラ技術など、自動運転に欠かせない技術は軍事技術とオーバーラップする。
グーグルの無人車が話題になった直後の東京モーターショー2013では、グーグルが自動運転に関する講演を行っていた。同シンポジウムのパネルディスカッションで私はモデレーターを務めていたので、その後もグーグルの自動運転の動向には注目してきた。
歴史と実績がある既存の自動車産業とシリコンバレーの新興IT企業はいずれ協力し合い、自動運転の実用化に向けて研究開発が進められるのではないだろうか。そのとき、ニッポンの自動車産業がIT企業とどう連携するのか。興味は尽きない。
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