「米国一極支配」と「リベラルな国際秩序」は幻だった エネルギーを基軸に組み立てられた政治経済学で読み解く
その後、QE3は2014年10月で終了し、ゼロ金利政策は15年末に解除されるが、このFRBの政策転換によって地政学的に最も大きな影響を受けた国がウクライナであった。
民主主義の危機がもたらしたトランプ勝利
第Ⅲ部「民主主義政治」では、第二次世界大戦後の世界で国民国家が直面する経済的課題を起因とする、アメリカとヨーロッパにおける自由民主主義の危機について検証する。
その際、著者はポリュビオスの国制循環論に依りつつ、あらゆる「統治形態はそれ自体の過剰によって崩壊する」とし、民主主義の過剰、貴族主義の過剰がもたらす弊害について説明する。「代議制民主主義は、時とともに貴族主義の過剰を増幅させる傾向が強い」と述べる一方、「民主主義の過剰が時とともに民主主義の解体につながる最大の原因は債務である」としている。
第Ⅲ部において特に重要な点は、債務、税制、移民、ナショナリズムなどによって特徴づけられる世界を代議制民主主義と調和させることの難しさである。
代議制民主主義は、往々にして国民国家や超国家組織の政策意思決定において「制約(constraints)」として作用する。
経済的国民意識としての「経済的ネイションフッドが空洞化するにつれて、民主主義諸国には、過去の歴史的経験から得られた「人民」という特別な観念が残され、それに付随して、移民との関係やアメリカでいまだに残る奴隷制の遺産との関係で、種々の複雑な問題が生じた」と著者は説明する。
資本や労働力の自由な移動、EUのような国境を越えた統治の実験などによって、戦後の国民国家はその境界が曖昧となり、それを維持することがますます困難となってきた。
こうした危機が2016年のブレグジットとドナルド・トランプの大統領選勝利をもたらしたと言える。
トランプは「制限的なアメリカのネイションフッド」という遺産を利用し、非正規移民(不法移民)と国境という重大な問題を持ち出して、アメリカの白人ナショナリストの支持を固めた。
アメリカの政治システムにおいて顕在化した分断は、ブレグジットをきっかけにイギリスを襲った分断の合わせ鏡である。
それはまた、政治的連合体がその意思として選挙での敗北を受け入れる「敗者の同意」が弱まりつつある傾向の反映であり、著者はそれを経済的ネイションフッドの崩壊の産物と捉えている。
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