「米国一極支配」と「リベラルな国際秩序」は幻だった エネルギーを基軸に組み立てられた政治経済学で読み解く
本書は、地政学(エネルギー)、経済(グローバル金融)、政治(民主主義)という3つの領域を軸に、それぞれの歴史を織り交ぜつつ、経済や政治の変化に関する長期的な物語を提示したものである。
著者は、アメリカとヨーロッパ(特にイギリス、フランス、ドイツ、イタリア)に焦点を当て、現在の私たちが目の当たりにしている経済的・地政学的混乱の多くが1970年代の出来事に起因することを論証している。
1970年代前半のブレトンウッズ体制の崩壊、1973年および1979〜80年の2度にわたるオイルショック、それらを契機とする世界の構造的変化によって、一見安定しているかにみえた冷戦後の国際秩序が21世紀の最初の20年で大きく揺らいできた過程を丹念にたどっている。
「化石燃料」が重要な鍵を握る
21世紀もおよそ四半世紀が経つが、この間、世界的に多大な影響をもたらした災厄が次から次へと連鎖的に起こった。
2001年の9.11とアメリカによるアフガニスタンとイラクへの侵攻、2007年から08年にかけての世界金融危機とその後の大不況、2010年から11年にかけてのアラブの春、2011年から続くシリア内戦、2016年のブレグジット国民投票(イギリスのEU離脱が完了するのは20年末)とドナルド・トランプの米大統領選勝利、さらには20年の新型コロナ・パンデミックの発生に至るまで、気候変動に伴う自然災害や異常気象はもとより、人類社会は歴史学者アダム・トゥーズの言う「複合危機」に苛まれている(アダム・トゥーズ『世界はコロナとどう闘ったのか?─パンデミック経済危機』江口泰子訳、東洋経済新報社、2022年)。
この複合危機にたいして多角的・総合的な分析を試みているのが本書である。
著者の分析の重要な鍵の一つが、原油・天然ガスなどの化石燃料である。「20世紀から21世紀初頭にかけての経済・政治史は、石油と天然ガスの生産・消費・輸送から起こった事態を理解することなしには成り立たない」。
また同時に、資源の枯渇を背景とするグリーンエネルギーへの転換の動きも無視することはできない。
しかしながら、少なくともコロナ前10年間の政治的混乱についてエネルギーだけを論じれば十分というわけにはいかない。政治それ自体が問題を引き起こし、「一種のエントロピー(無秩序因子)をも抱えている」からである。それゆえ「政治秩序を確立し維持しようとする試みは、必ずや将来に秩序崩壊の種を残すこととなるのである」。
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