人口47人・限界集落で盛況する「峠の茶屋」。「あそこの灯が消えるとき、集落も終わる」地域の総合商社の”超多角化経営”が凄すぎた
冷凍していないマグロを食べたのは初めてで、その鮮烈な食体験と周辺の漁港の風景の美しさ、人里離れた雰囲気も相まって、「がんじん荘」は忘れられない“峠の茶屋”として著者の記憶に残っていた。


夜も「居酒屋」と正式に名乗るほどガッツリと営業はしていないが、店の冷蔵庫に缶ビールを用意しており、地元の常連客はセルフで取って飲んだ分の料金を支払うシステムになっている。
自分の家からおつまみを持ってきてもよい。お店の混雑状況やそのときの魚によっては、刺身や料理などを店主に頼んで出してもらう人もいる(※遠方から行く場合は予約必須)。
「このあたりは他に行くところないんですよ」と上塘さん。


喫茶店や居酒屋の看板を掲げているわけではない、でも時として、臨機応変に集落でその役割を果たし、釣り客が帰りにコーヒーを飲んでくつろいだり、集落の人が居酒屋でゆっくりお酒を飲んだりと、憩いの場になっている。
・4本目の柱:雑貨屋(酒、タバコ)
「雑貨屋と言っても酒とタバコ、あとは自分たちが使うものを少し置いているくらい」と上塘さん。

観光客にも知られているのが、オリジナルラベルの「鍳真焼酎」。秋目に上陸した鑑真和尚にちなんで作ったものだ。買えるのは「がんじん荘」だけであるため、観光に訪れた人が買いにくることも多い。この焼酎は毎月4~5ケース、お中元の時期になると二十数ケースが出る。
その他にも、スキューバーダイビングのボンベ貸し出し、東シナ海のクルージング(1人2200円、6人から受付)など、あらゆる依頼に臨機応変に対応している。
郵便局の仕事もしていたが、取扱量が少なくなったため、現在は簡易郵便局としての役割は停止している。
5年後、10年後のことをする
現在、上塘さんは「一般社団法人 007 AKIME」で代表理事を務め、007の撮影に使われた古民家の保存にも取り組んでいる。その古民家は秋目でロケ当時のまま残っている唯一の建物であり、貴重な映画資料でもある。
上塘さんは、グリーンツーリズムが話題になったときは、真っ先に免許を取りに行くなど、秋目という場所をいかに楽しんでもらうか、いかに見せるか、あらゆる方法を模索し続けてきた。今「がんじん荘」が手掛ける業務内容は、この土地でできることに最大限取り組み、対応し続けてきた中で生まれたものなのである。
「人がいなくなったよね。今から5年後はもっと人がいなくなるだろうし、5年後、10年後のことをしないと」
秋目や「がんじん荘」を訪れる人たちは何に魅せられ、惹きつけられているのだろうか。今に至るまでの歴史と、007のロケの舞台裏エピソードを後編の記事ー【もっと読む】「最盛期1328人→現在47人」ある限界集落の歴史ーでお届けする。
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