こんな事業計画を立てると、結局、何のための事業かさえ、よく分からないほどに目標が多角化していきます。さらに、事業目標と政策目標とがごちゃごちゃになり、一石二鳥どころか、「事業も失敗、政策も失敗」という虻蜂取らずの話になってしまいます。
(2) 「地元合意」と「制度制約」に縛られマーケットを無視
自治体をあげて邁進するような3セクは、税金が多額に投入されるため、議会や行政、市民参加型の委員会等での合意形成が最優先されます。さらに、国の補助金制度などを活用することも多々ありますが、その際はおカネを使って支援する対象には、制約が出てきます。
こうしたケースは税金を使うのだから当たり前なのですが、事業として見た場合は、決して合理的ではありません。なぜなら事業内容が「顧客」を向いて決定されるのではなく、「地元合意」と「制度制約」にのっとって、決定されてしまうからです。
本来のニュービジネスとは、まずは小さく新商品を産んで、イベント販売などを行って売上げを伸ばしていき、その規模にのっとって、後から施設開発などの設備投資へと発展していくのが自然な姿です。
しかし、「まちをあげた活性化の切り札事業」ということになると、派手さのない地道な計画では、かえって地元の合意が取れません。「せっかく補助金がくるんだから使えるものは使おう、目一杯大きい事業にしよう」という声が後押しし、ともすると、皆の勝手な希望が盛り込まれた、とんでもなく大きな絵を描いた事業で合意されることになります。
結果として、3セクの事業はまったく営業実績がない状況にもかかわらず、巨額の投資をして施設開発を先に行ったりしてしまいます。しかし、実際には事業は市場原理で働きます。いくら議会で承認され、制度で補助金が出たとしても、肝心の消費者から支持されるかどうかが大切だし、競合しているサービスよりも優位性がなければ、経営はたちまち行き詰まります。結局、大風呂敷が災いし、結局のところ3セクの事業によって、大きな損失を招きかねず、地域はさらに衰退してしまいます。
(3) 計画は外注、資金調達も「役所まかせ」、失敗しても救済
一般的には、事業というのは自分たちの手で考え、自分たちの手元資金にプラスして投資家や銀行へと説明して資金を集め、限られた資源の中で事業の成功に向けて努力していくものです。
3セクもまた、本来は独立した法人のため、自分たちで事業を組み立て、資金調達し、その成否に対して、経営陣は責任を取らなくてはなりません。しかし、現実は必ずしもそうなりません。
役員には事業をしたことがない役所絡みの人が就き、事業設計はコンサルに外注。資金調達については、補助金だけでなく、自治体から直接借り入れたり、もしくは損失が出た場合の補償を、自治体にしてもらう条件で銀行から融資を受けたりしてしまうわけです。
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