自治体が「3セク」で失敗を繰り返す3つの理由 南アルプス市では開業3カ月で破たん危機

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そもそもこうした3セクでは、本来は経営責任を負うべきなのに、経営責任を持たない、あるいは事業をしたことがない人が行うことが大半です。そのため、他人に任せるにしても、誰に任せたらいいかということさえ分からない。損失が出ても、結局は自治体がどうにかしてくれると思っている「環境」のため、まともな経営などできないわけです。そもそも事業も資金も、全てにおいて責任が不明瞭なわけです。

最悪なのは結局、もし失敗しても、再建計画もまた別のコンサルに依頼することです。そして「潰してはいけない。潰すと大変だ」といったような話で、自治体がだらだらと救済策を講じ続けることです。こうした場合、3セクの失敗は潰して終わりにならず、むしろ潰れかかってからの支援のほうが高くつくことさえあります。

このように「無理な複数目標設定」、「地元合意・制度制約」、「計画の外注・役所任せの資金調達」という3つの要件によって、3セクは地域を活性化するどころか、トータルでは結局は地元財政を無駄に消耗することにつながっるケースが多々あるのです。

「積小為大(せきしょういだい)」と向き合うことが重要

これらの教訓から、地域での事業で心がけるべきことは、非常にシンプルです。

・事業で達成しようとしている目標を1つに絞ること。

・小さく積み上げ、営業の成長と共に投資規模を大きくしていくこと。

・事業を組み立て営業できる人間が経営し、資金調達に行政は関与しないこと。

以上の3つが基本原則ということです。

例えば、先日、小田原市でお話を伺った「小田原柑橘倶楽部」の取り組みは非常に参考になります。小田原市での、地元生産物である柑橘類を原材料にした商品化による農業・加工所得の改善を目指した取り組みです。このプロジェクトは全て民間主導であり、行政の予算などには依存せず、民間の事業ができる人間たちで集まり始め、成長を重ねています。

この取組みは、実は江戸時代後期に600もの農村再生を牽引した地元の偉人・二宮尊徳が残した「積小為大」という言葉に基づいています。小さなものが積もり積もって大きくなる。物事の順序を取り違えれば、必ずおかしくなる、という意味です。この教訓は現代にも通じることで、重たいと感じています。
 

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

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