鬼怒川水害「二審勝訴」でも原告に笑顔ない事情 堤防整備のあり方を問題視したが、認められず

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判決後、「勝訴」の旗を掲げる住民たちの表情は硬かった(撮影:河野博子)

一方、国土交通省は「国の主張が一部認められなかったものと認識しております。今後、判決内容を慎重に精査し、関係機関と協議の上、適切に対処してまいります」との岩﨑福久・関東地方整備局長のコメントを発表した。

線状降水帯が頻繁な今、治水のあり方はこれでいいのか

積乱雲が次々に発生し、ほぼ同じ場所にとどまり続けることにより大雨をもたらす長さ50~300km、幅20~50kmほどの雨域のことを「線状降水帯」という。

鬼怒川大水害が起きた2015年当時は、「線状降水帯」という言葉がまだ世の中に定着していなかった。前年の2014年8月に広島で土砂災害をもたらした豪雨の際に発生して話題になったものの、翌年の鬼怒川大水害の際にはその怖さが十分認識されていなかった。

線状降水帯による大雨の増加は、地球温暖化に伴い、雨の降り方が変わってきた現象の一つ。どのように水害を減らしていくのか、治水の方法を考え直す必要がある。

特に、自然の地形を生かした減災が世界的に注目されているなか、砂丘林という「自然堤防」の活用が急がれる。

この裁判は今後、上告を経て最高裁の判断をあおぐことになるのか。法廷での争いが続くとしても、行政は現行制度上の課題を整理し、改善を急ぐべきだ。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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