鬼怒川水害「二審勝訴」でも原告に笑顔ない事情 堤防整備のあり方を問題視したが、認められず
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控訴審判決を前に、原告らが記者たちを現場に案内した。若宮戸地区の原告で花卉生産販売の高橋敏明さん(71歳)が削られた区間を見下ろす砂丘林の端に立った。足元から約2m低い地面に太陽光パネルが並び、その向こうに残っている砂丘林が見える。
大水害の前年の春に掘削された砂丘林。この場所を国土地理院の地図でみると、「1987~1990年撮影」の写真に写る砂丘林の一部が、「2021年5月撮影」の写真では太陽光発電所に変わっている。
「砂丘林の掘削について、国土交通省は黙認していたわけではない」。水害の後、同省はこう説明した(2015年9月19日付プレスレリース)。常総市とともに発電事業者に掘削中止を頼んだがかなわず、2014年7月初旬には大型土嚢の設置を完了したという。
東京高裁の判決で述べられたこと
もともと砂丘林は3つの筋からなる幅広いものだったが、1964年の東京五輪を前にコンクリート骨材などの建設材料として砂が採取され、幅が狭まった。一筋だけ残っていた砂丘林が消えたことに住民が驚き、市議会議員らが尽力した結果、土嚢が積まれた。
一審の水戸地裁は国に対し、砂丘を維持するために開発を制限する河川区域の指定を行うべきであったとし、「河川管理の瑕疵があった」とした。
26日、東京高裁の判決は、一審判決同様、「若宮戸地区においては、本件砂丘について河川区域に指定されていなかったため、本件掘削によって(略)社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていない状態となっていた」とし、「鬼怒川に係る河川管理についての瑕疵に当たる」と述べた。
住民側原告団の在間正史弁護士は「100%とはいえないが90%くらい我々の言い分が裁判所に認められた」と受け止めた。
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