コンバースは、なぜ音楽スタジオを運営するのか アーティスト支援というマーケティング戦略
同社が経営基盤を安定させた2011年に運用開始したのがラバー・トラックスだ。若きアーティストのキャリアに寄与するという目的で、ブルックリンでレコーディングスタジオをオープンした。ルイス氏によると、コンバースは無名のアーティストや音楽業界の未来に投資することこそ、自社の未来につながると信じているという。
最近では、同社の新しい本社があるボストンやブラジルにもレコーディングスタジオをオープン。その他には移動式のレコーディングスタジオを25の都市に展開しており、現在はテキサス州オースティンやオランダのアムステルダムなど、世界中でアーティストのレコーディングの支援をしている。いままでに1400のバンドがこれらのスタジオを利用し、レコーディングの総時間数は、実に1万1200時間にもなる。
「ブランドとミュージシャンが手を組むのは、マーケティング戦略としてはよくあることだ」と話すのは、バークリー音楽院の音楽ビジネスマネジメント部、ステファニー・ケラー教授。楽曲の権利がアーティストたちにあることについて「売り出し中のアーティストにレコーディングさせ、曲のオーナーシップをそのまま保持させているコンバースの方向性には興味深いものがある」とコメントした。
そんなコンバースのスタジオを利用するのは簡単だ。ミュージシャンはまずオンライン上で各地のスタジオに申し込む。そして、申し込みが受け入れられた場合、それから1カ月前後でレコーディングを行うことができる。ちなみに、通常ならレコーディングをするのに数千ドルはかかる。
ミュージシャン支援から得られるもの
ラバー・トラックス・ブルックリンのアシスタントマネジャーを務めるベン・ジュリアサッド氏は、スタジオを提供するに価するバンドをつねに探しているという。また、同氏のチームは、レコーディングをするバンドの広報も兼務。バンドのSNS運用を代行し、それぞれのフォロワーをラバー・トラックスのアカウントに誘導したりもする。
バンドは、録音した楽曲の権利はすべてアーティストに帰属するという契約を、わずかな付随条件とともにコンバースと結ぶ。コンバースがスタジオ録音した楽曲を使用したい場合は、バンドの承認を得ればソーシャルメディアや自社のオンラインストリーミングサイトの「サウンドクラウド」でシェアできるという。この「サウンドクラウド」には現在、1万1000人の会員がいる。また、コンバースはラバー・トラックスで録音した楽曲を、アーティストの許諾を条件に、デジタルコンテンツとしても使用できる。