経営統合破談で注目集まる鴻海の知られざる内憂 カリスマ創業者が「怪しい動き」
リウ氏に経営を譲った後、ゴウ氏は2度(2020年、2024年)も台湾総統選挙への出馬を画策した。結果はいずれも出馬に至れなかった。しかも2度目については、有権者の買収疑惑で複数の陣営関係者が摘発されている。今後の政治活動がほぼ不可能になったゴウ氏が、再び鴻海の経営に関心を持ち始めたと伝えられている。

鴻海は5月29日に株主総会を予定しており、今年は3年に1度の取締役(董事)の改選が行われる。ゴウ氏は総統選挙出馬を画策していた2023年9月に「個人的な理由」で鴻海の取締役を辞任し、空席のままとなっていたのだが、そこへの復帰を目指しているというのが台湾財界の風評である。
これが現実のものになれば、鴻海にとっては日産への出資のハードルが高まる可能性がある。経済産業省には、鴻海が日産に近づくことを「経済安全保障上の懸念がある」として強く反対する幹部もいる。
現時点では「経済安全保障上の懸念」の根拠は漠としたものにすぎない。例えば鴻海は、マイクロソフトとデル・テクノロジーズにサーバーを供給しているが、もし鴻海に安全保障上の問題があるなら、アメリカ政府の納入企業である両社が取引するだろうか、といった議論が真剣にされているわけではない。
懸念される中国共産党政権との親密さ
だがゴウ氏が復帰すると景色は大きく変わる。ゴウ氏は中国共産党政権との親密さを誇って台湾総統選挙に出馬を試みた人物である。彼が鴻海の取締役に復帰となった場合、経済安全保障上の懸念はこれまで以上に強く指摘されるだろう。
日産は外為法(外国為替及び外国貿易法)に基づき、外資からの出資を受ける際に安全保障面などの事前審査が求められている企業である。冒頭の通り、リウCEOはルノーと日産株について議論したことを明言している。
もし鴻海が実際に日産株を取得しようとなったとき、ゴウ氏が取締役に復帰していたとしたら審査はどのようなものになるだろうか。シャープ買収で日本を騒がせたゴウ氏は、その野心のほどでまたもや日本を「お騒がせ」しかねない状況だ。
リウCEOら鴻海の現経営陣にとって、迷惑千万な事態に違いない。
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