経営統合破談で注目集まる鴻海の知られざる内憂 カリスマ創業者が「怪しい動き」

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リウCEOがここまで踏み込んで語ったのは、EV以外の鴻海の本業が好調という理由がありそうだ。アメリカのエヌビディアとの良好な関係を基にAI(人工知能)サーバー事業が絶好調で、そのおかげで2025年の売上高は8兆台湾ドル(約40兆円)に達する可能性があるのだという。2024年の業績は速報値で6.9兆台湾ドル(約34.5兆円)だったから、最大で15%程度の成長を見込んでいる計算だ。

EVもAIサーバーもリウ氏が2019年にCEOに就任して以来、重点的に取り組んできた新事業である。リウCEOを後継者に選んで間違いはなかった、とカリスマ創業者のテリー・ゴウ(郭台銘)氏もさぞ満足しているに違いない……と思いきや、どうもそうではないらしい。

リウCEOや鴻海の現経営陣、さらにはOBまで不安にさせるような「怪しい動き」をこのところゴウ氏がしているのだ。そしてもしゴウ氏の動きがさらに活発になれば、日産との未来にも影響する懸念がある。

ゴウ氏の「怪しい動き」が目撃されたのは、昨年12月のことだった。

「ゴウ氏は鴻海に戻るのか」

旧暦で新年を祝う台湾では、12月16日はまだ年末のせわしさもない静かな時期である。この日にゴウ氏が鴻海の元幹部を複数集めて宴会を開いていたのだが、物議を醸したのはそこに飾られたスローガンのような文言である。

「皆がいなければ今日の鴻海はない」

「兄弟の情は海のように深い」

「人は賢くある前に、誠実さがなければならない」

ゴウ氏と元幹部の結束を誇示するような文言が画像として流布したことで、鴻海関係者や台湾の投資家は「ゴウ氏が鴻海の経営に復帰するのではないか」と戦々恐々なのである。

リウ氏は元々、アメリカでマザーボードのベンチャー企業を経営していた起業家肌の人物。買収で鴻海傘下に入った後、経営トップの特別補佐としてゴウ氏の信頼を得た。ゴウ氏が古参幹部を退け「非本流」のリウ氏を後継者に選んだのは、リウ氏であれば鴻海に新たなビジネスと成長をもたらせると考えたからだという。

これが一部の古参幹部たちにとっては、おもしろくない。「ゴウ氏率いる昔の鴻海」を懐かしむ向きがあった。どこの企業でも起こる世代交代の一場面といえそうだが、問題は、ゴウ氏自身が「超絶ヒマ」ともいえる状況になってしまったことである。

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