それではトランプさんは、いったい何に関心があるのだろう。筆者の仮説は、「第2期トランプ政権は、史上初のフロリダ政権である」というものだ。
まず、今度の政権にはフロリダ州出身者がやたらと多い。マルコ・ルビオ国務長官は同州選出の上院議員。パム・ボンディ司法長官も同州の司法長官だった。マイケル・ウォルツ国家安全保障担当補佐官も、やはり同州選出の下院議員。そして首席補佐官を務めるスージー・ワイルズ氏も、長らくフロリダ政界で活躍してきた人だ。
トランプさんご自身も出身はニューヨークだが、現在はフロリダ州パームビーチに住んでいる。邸宅であるマール・ア・ラーゴは「冬のホワイトハウス」と呼ばれ、海外の賓客が招待されることがあるし、重要事項がここで決定することも少なくない。
ワシントンからフロリダの自宅までは「驚くべき近さ」
ひとつ興味深い事実をご紹介しよう。2月7日、日米首脳会談があった日のトランプさんの行動である。午前11時30分にホワイトハウスで石破首相の訪問を受けて首脳会談。11時50分からワーキングランチ。午後1時10分から共同記者会見。午後2時には宗教信仰事務局を創設する大統領令に署名し、午後3時にはホワイトハウスを発っている。
さて、フロリダのおうちに着くのは何時頃でしょう? 5~6時間はかかるだろうと思ったら、違うのである。アンドリュース空軍基地から飛び立つと、5時25分にはパームビーチ空港についてしまい、5時50分にマール・ア・ラーゴ着。つまりドア・ツー・ドアで3時間もかからない。余裕で晩御飯がおうちで食べられてしまうのだ。
つまりワシントンとフロリダはとっても近い。この政権はトップの重心がフロリダに傾いている。ちなみに歴代の合衆国大統領で、フロリダ州出身者は一人もいない。
フロリダ州は、大西洋とカリブ海(メキシコ湾)に面している。近くには「脅威」と呼べるような国は存在しない。キューバは仮想敵国かもしれないが、アメリカに危害を及ぼすほどの気遣いはない。こういう「安全地帯」にいると、世界のさまざまな地政学リスクは縁遠いものに感じられるだろう。
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