セブン「独り負け」と猛烈批判する人への違和感 価格対応は対症療法として必要だが本質ではない
物価上昇で価格感応度が高まる消費者に対して、価格対応は対症療法として必要だが、それは本質ではない。むしろコンビニが急ぐべきは、ビジネス街や工場内、住宅街、地方ロードサイドといった「時間制約のパターン」ごとに最適な店舗タイプを開発することだろう。ポイントやアプリが普及してきた今なら、ビッグデータを活用し、顧客の求める品揃えや価格感応度を分析することが十分可能なはずである。
コンビニは小売業の中ではDX化が進んでいるように見えるが、顧客層の細分化など、マーケティングや業態開発にビッグデータを活用するという発想は、これまではあまり強くなかったようにも見える。その背景には、コンビニがPOSを活用した単品管理の成功者だったからではないか。単品管理は商品動向を細かく把握するのに大いに貢献したが、商品が主体であり、顧客が「どんな人か」は基本的に見えにくい。
一方ビッグデータは個人ID単位で収集・分析できるため、他のITプラットフォーマーと連携すれば、顧客の生活全体を把握する可能性すらある。現在のコンビニは、この方向へと発想転換の途上なのであり、ローソンが三菱商事に加え携帯キャリア・デジタルプラットフォーマーでもあるauをパートナーに選んだのも、こうした考えが背景にあるのだろう。
立地特性による価格と品揃えの最適解
新幹線に乗る前に食料を買おうとすると、周辺の商業施設や駅構内、ホームの売店など、列車に近づくほど価格が高くなる。消費者もそれに文句を言わない。選択肢が少なくなれば、値段が高くても代替できないからであり、それは商売の手法としてなんら間違ってはいない、と皆が納得しているからだ。コンビニも店舗ごとに提供する利便性が異なるのなら、それに応じて品揃えや価格設定を変えるべきだろう。
たとえばJR東日本の駅構内(エキナカ)という閉鎖商圏では、NewDaysというコンビニが独自の価格と品揃えで成立している。大手コンビニもこうした顧客特性ごとの業態を作り、それぞれの収益極大化を模索していくべき時期に入っているのだが、それが遅れている、ということなのであろう。「セブン独り負け」といわれていた事象は、単一業態の王者セブンから浮き彫りになった、多業態化への転換を促すアラームのように思えたのである。
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