セブン「独り負け」と猛烈批判する人への違和感 価格対応は対症療法として必要だが本質ではない
消費者の購買行動は、①予算制約と②時間制約という2つの要因に大きく左右される。金銭面も時間も限られた中で、消費者はその範囲内で最適だと思う選択をするわけだ。特に、仕事中の昼休みにペットボトルを買う場合など、時間の制約が厳しいときは、往復20分かけてスーパーで78円の飲料を買うよりも、近くのコンビニで130円の飲料を買うことになる。つまりコンビニとは、差額分で「時間」を買っている場所ともいえる。
一方、勤務時間後などに余裕ができれば、より価格の安いスーパーへ足を運ぶかもしれない。ざっくり言えばスーパーは予算制約を緩和し、コンビニは時間制約を緩和する役割を担う。そのため両者は住み分けが可能であり、原則的にはコンビニが価格を全面的に争点にする必要はない、ということになる。
だがそれなら、コンビニの価格対応で売り上げに差が出たり、セブンが追加的に価格対応をするのと話が合わない、と思われるだろう。しかし、前述の理屈は原則の話であって、すべてがこの理屈だけで語れるわけがないからだ。実際には時間よりも予算制約を重視する層が、コンビニを利用しているケースもあるからだ。そうした層は、価格が高いと感じれば、コンビニで買わなくなるかもしれない
多様化する顧客層と新業態の必要性
もっとも図が示すように、実際に平均日販へ与えた影響は先の図のとおり、5%ほどである。仮にその5%を引き止めるために、全店で利幅を削った値下げを行うのであれば、利益を損なう可能性がある。そうした顧客層をも取り込みたいのであれば、より低価格帯で構成した新業態を用意すべきということになるのだろう(イオングループの小型スーパー「まいばすけっと」のように)。
これまでコンビニは顧客層の違いに関係なく、ほぼひとつの店舗タイプで全国展開してきた。顧客層に合わせて細分化した店舗はコスト増になるので、大都市で成功したタイプを全国展開してトップシェアを確立することを優先したためだった。
しかし、今やコンビニは全国5万7000店超となって、ほぼ飽和状態になり、店舗数を従来のように増やせない状況になっている。これからは、顧客層に合わせて品揃えや価格帯が異なる業態を生み出していく必要に迫られているのであろう
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