こうした状況を受けて、台湾の頼清徳政権はさまざまな対応を図ろうとしている。第1に、アメリカでの工場設置やビジネスマッチングに対する支援の強化である。
それにより、トランプ政権のリショアリング政策に寄り添うとともに、台湾企業の円滑な対米進出やアメリカでの商機獲得につなげたいと考えている。2025年5月開催の「SelectUSA投資サミット」に合わせて、経済部長(大臣)が台湾企業とともに訪米する方針も打ち出されている。
トランプの台湾認識がカギ
第2に、アメリカからの武器購入増である。頼氏は2024年12月にハワイで自衛強化を強調した。また、フィナンシャル・タイムズによると、2024年11月に頼政権は150億ドル以上の武器をアメリカから購入することを検討しており、トランプ氏の政権移行チームと非公式に接触したようだ。
トランプ大統領が「台湾はGDP比10%を防衛費として払うべきだ」と述べたことを踏まえての動きだろう。その他、対米関係強化のために、アメリカ産天然ガスの購入などを図るのではないかとの観測も出ている。
少数与党である頼政権は、予算を野党に握られており、それが対米外交上も制約となっている。だが、やはり米台関係のカギを握るのはトランプ氏の対台湾認識だろう。
国防長官や国家安全保障担当補佐官には対中タカ派が着任したが、「中国が台湾に侵攻すれば150%から200%の関税を課す」といったトランプ氏の発言(2024年10月)は、アメリカは台湾を守ってくれるのかとの疑念を再燃させた。また、台湾の空洞化を引き起こすような強烈な半導体企業誘致策が打ち出されれば、台湾の戦略的不可欠性が損なわれかねないと警戒されてもいる。
2月7日の日米首脳会談で両首脳は「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性を強調」し、「両岸問題の平和的解決を促し、力又は威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対」するとの声明を出した。トランプ氏に台湾の戦略的地位に関する認識があることが示されたといえよう。
台湾総統府も2月8日に報道官を通じて日米首脳に謝意を表している。ただし、こうした台湾の戦略的重要性に対する認識が台湾に対するアメリカの対台湾通商政策にどの程度反映されるのかは予断を許さない。半導体産業、農業、鉄鋼や石油化学産業などは台湾経済の発展のみならず、経済安全保障や政治の安定にもかかわるだけに、トランプ政権の台湾に対する通商政策の先行きについては、まだまだ注視が必要だろう。
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