定義上は「まだデフレ?」でも日銀は気にしない 需要不足に見えるのは「人手不足で設備が稼働できない」から

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「少なくとも1%程度までの利上げが必要」と日銀の田村直樹審議委員が講演し、日銀の早期利上げへの観測が強まっている。田村氏も述べた「需給ギャップ」の内実とは。

客が来ても人手がなければホテルは稼働できない(写真:Bloomberg)
※本記事は2025年2月15日6:00まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

1月24日に行われた0.25%から0.50%への利上げに対し、実質賃金の低迷やマイナスの需給ギャップ(供給>需要)を理由に反対する論陣がある。

確かに、需給ギャップは政府の掲げるデフレ脱却の4条件(①消費者物価指数、②GDPデフレーター、③単位労働コスト<ULC>、④需給ギャップ)の1つであるため、その不調を理由に引き締め的な政策運営を牽制するのはわからなくはない(そもそも現状をデフレと呼ぶことについて大きな疑義があることはさておき)。

ちなみに今や①から③がプラスに転じているため、④の需給ギャップが余計にクローズアップされやすい面もありそうだ。

しかし、後述するように、そもそも正確な測定が難しい需給ギャップを政策判断の要諦に置くのは危うい。

わかりやすいが扱い注意の「需給ギャップ」

まず、需給ギャップとは何か。日銀が2017年4月に公表したペーパー「需給ギャップと潜在成長率の見直しについて」では需給ギャップについて、「一国全体の財・サービス市場において、『総需要(実際のGDP)』が、景気循環の影響を均してみた『平均的な供給力(潜在GDP)』からどの程度乖離しているかを示す指標」と定義している。

要するに、経済全体に関する「潜在供給力と総需要の差」である。

プラスならば総需要の方が大きく物価上昇圧力が強い、マイナスならば潜在供給力の方が大きく物価上昇圧力が弱いという解釈になる。概念としてわかりやすいため、特に経済・金融知識に明るくない層にも受け入れられやすく、財政・金融政策運営を議論する材料に使われやすい。

しかし、得てして「わかりやすさ」は万能ではなく、危うさをはらんでいる。

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