実証を行う西部地区は、JR函館駅がある市街中心部と、夜間に宝石箱のような美しい夜景が見える場所として有名な、函館山(標高333.8m)の中間に位置する。
函館山の山麓に広がる街は、急な坂が多い古くからの居住地域、その先の平地に「マックスバリュー」「ツルハドラッグ」「DCMニコット」「サツドラ(サッポロドラッグストアー)」などの商業施設や、地域の憩いの場である谷地頭温泉などが点在する、という構造だ。
だが、路線バスや路面電車が走るのは平地部分のみで、西部地区全体をカバーしておらず、またコミュニティバスは、西部地区だけではなく函館市全体で導入していない。
函館市中心部周辺を視察したあと、函館市企画部計画推進室交通政策課でAIオンデマンド交通実証運行に関する話を聞いた。

人口減少と高齢化が急速に進むエリア
交通施策の全体像として、2024年度から2028年度までの5年間に実施する「函館市地域公共交通計画」があり、AIオンデマンド交通はその一環として行われている。
函館市の「街の変化」で大きな特徴は、人口減少が顕著である点だ。
市が公表している2024年11月時点のデータによると、人口は23万6774人。今から20年後の2045年には、17.3万人まで減少すると予想されている。これは、1980年比で半減となる。
高齢化率も高い。直近データでは、65歳以上は全体の37.2%となる8万8156人、労働人口と呼ばれる15歳から64歳は54.2%の12万8277人、そして0歳から14歳が8.6%の2万341人だ。
また、函館市は2004年に戸井町、恵山町、椴法華村、南茅部町が合併しており、市の中心市街部と東部地区では人口密度が大きく違う。そのため路線バスなど公共交通の利便性が、低い地域がある。

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