三菱商事「522億円減損」で洋上風力は曲がり角 3年前の安値での「総取り」から環境が激変

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三菱商事
2月6日の三菱商事の決算会見で中西社長(右から2人目)は今回の減損計上について「リスクの見通しが甘かったというより、インフレを超えるコスト増加が押し寄せた」と釈明した(写真:三菱商事)

国内の大型洋上風力発電プロジェクトが揺れている。

三菱商事は2月6日、2024年4~12月期の決算と併せて、同社が手がける国内3海域の洋上風力発電のプロジェクトで522億円の減損損失を計上したことを発表した。

2025年3月期通期の業績見通しは、シェールガスや銅事業の受け取り配当が上振れしたことで、純利益9500億円という従来計画を据え置いている。

三菱商事を中心とする企業連合は2021年12月、国の洋上風力発電事業のいわゆる「第1ラウンド」の公募で秋田県、千葉県の3海域の事業を「総取り」した。総事業費は「1兆円に近いほうの数千億円」(電力業界関係者)とも言われる巨大プロジェクトだ。

入札で三菱商事が示した売電価格は、入札上限の1キロワット時当たり29円を大きく下回る11.99~16.49円。20円台で応札した事業連合が多い中、圧倒的な安値が「事業独占」の決め手となった。

その後、ライバル企業からは「価格破壊」「赤字入札ではないか」「絶対にその価格では不可能」といった声もあがったが、中西勝也社長は「採算を取れる値段を算出し、この値段で選ばれるなら応札しようと打って出た。3海域が取れたのは結果にすぎない」と意に介さない様子だった。

「ゼロベースで計画を見直し」

決算会見に急きょ参加することにした中西社長は、「世界的なインフレの加速や円安進行、サプライチェーンの逼迫、金利上昇など地政学リスクに端を発した洋上風力業界を取り巻く事業環境の変化は、当初の想定を大きく上回るものとなった」と述べた。

プロジェクト自体はまだ最終投資決定に至っていない。風車など主要機器の発注もこれからだ。が、3海域ではすでに資産として計上していた調査や設計、許認可関連の費用などについて、現時点でできる最大限の減損処理を行い、「ゼロベースで計画を見直す」(中西社長)とした。

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