老夫婦はお金には困っていなかった。子どもたちに頼ることもなく、老後資金で暮らしていた。だからこそ、モノを買い込むことができたわけだが、ゆえに子どもたちは異変に気付くことができなかった。
子どもたちは関東で生活をし、親戚も九州にいた。加えて、部屋は賃貸ではなく分譲マンションだったので家賃は発生しない。結局、イーブイに片付けを依頼するまで1年間、手つかずのままだった。


高いモノが買いたいわけではない
現場に入ったスタッフはいつもより多めの8人。まずは玄関と廊下のゴミを搬出し、作業スペースを確保する。それから天井まで積み上がった各部屋のゴミを崩し、仕分けをしながら外へ運び出していく。
衣類の多くはすでにゴミ袋に入っていたが、このまま捨てることはできない。1つひとつ中身を出し、別のゴミ袋に移し替える。というのも、中にスプレーやライターが入っていると、ゴミ集積場で爆発する恐れがあるからだ(死亡事故に発展する危険性もある)。実際、ゴミ袋の中にはいくつかライターが交じっていた。

お金に余裕はあったが、衣類の多くは3000円前後の手頃な価格のモノだった。二見氏いわく、これはどのモノ屋敷にも共通していることだという。
「高いモノを買いたいわけではなく、何回も買いたい。だから、自然と安いモノになる傾向があるんです。わかりやすい例でいうと、100円ショップの商品。モノ屋敷には100円ショップで売っているような細々とした雑貨がめちゃくちゃ多いです」
しかし、モノを溜めてしまう人を頭ごなしに否定してはいけない。この老夫婦も子どもたちに何か言われるのが嫌で、部屋に上げようとしなかった。

無料会員登録はこちら
ログインはこちら