玄関にはすでに衣装ケースが積み上げられていて、部屋に入った瞬間に圧迫感を覚える。作業の見積もり時、廊下に積み上がっていたゴミは崩れ、床は足の踏み場もない。ゴミの上に乗り、奥の部屋を覗くと、わずかに日の光が差し込んだカーテンが見えた。頭の高さまでゴミが積もっているのだ。
玄関の右手にある洋室は天井までゴミ。左手にある洗面室も天上までゴミ。奥にあるリビングも、もうひとつの和室も同じような状況だった。ほぼすべての部屋がゴミの上にしゃがむと頭が天井についてしまうのだ。
しかし、生ゴミの類いはまったくと言っていいほどなく、ホコリっぽいだけで臭いはない。家中を埋め尽くすゴミ袋を開けてみると、その中身のほとんどが新品の衣類だった。そんなゴミ袋がベランダやコタツの中にまでなだれ込んでいた。
![ゴミ屋敷](https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/8/2/570/img_824397403ffea15f97f75e3a9d16f7aa501910.jpg)
![ゴミ屋敷](https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/b/6/570/img_b6b815a8652e825c377a89f5efe9c34a509666.jpg)
夫を亡くした寂しさから「買い物依存症」に
老夫婦はこの部屋に20年近く住んでいた。もともと夫が健在のときからモノの量は多いほうだったという。そんなこともあり、老夫婦は長らく子どもたちを部屋に上げることを拒んでいた。そして、夫が他界。その寂しさから、残された妻のモノを買うペースに拍車がかかってしまった。
夫の死後、3年して妻も他界。遺品整理のため何年かぶりに子どもたちが部屋に入ると、冒頭の状況を目にし、ショックを隠せなかった。当時、依頼主と言葉を交わした二見氏が話す。
「何でこの状況に気付いてあげられなかったのか、寂しさを買い物で埋めていたんじゃないかと、かなり後悔されている様子でした。最後に部屋へ入ったのは、5年前だったそうです。そのときからモノは多かったようですが、ここまでひどくはなかったとおっしゃっていました」(二見氏、以下同)
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